20 ぼくらはなんで生きているの?【童話】
5才になった、たかしくんはふと思いました。
「ぼくは、なんで生きているんだろう?」
周りを見ても思います。
「みんなは、なんで生きているんだろう?」
思い始めたら止まりません。うんうんとうなって考えていると、うさぎが通りかかりました。
「うさぎさん、うさぎさんはなんで生きているの?」
「そうですね。にんじんがおいしいからでしょうか」
うさぎはそう答えて去っていきました。
「にんじんがおいしいから生きているのかあ。ぼくだったらチョコレートかなあ」
たかしくんはうさぎの答えを聞いて考えました。考えていると、くまが通りかかりました。
「くまさん、くまさんはなんで生きているの?」
「わたしには、たかしくんのような子どもがいるの。苦労して手に入れたハチミツを、子どもがおいしい、おいしいって食べてくれたときに、ああ、生きているなって思うの」
くまは、そう答えて去っていきました。
「子どものために生きるのかあ、ぼくのお母さんもそうなのかな」
たかしくんはそう考えて、家に帰りました。そして、お母さんに聞きました。
「お母さん。お母さんは、なんで生きているの?」
「小さなことでも、たかしくんが喜んでくれるときが、わたしには一番生きているなって思うのよ」
お母さんは笑って答えました。
そういえば、たかしくんも誰かが喜んでくれると幸せな気持ちになります。
「誰かを幸せにするために、ぼくらは生きているんだね」
たかしくんは答えが分かったので、にっこりと笑いました。




