2 猫とクリスマスツリー【ヒューマンドラマ】 陽菜子 キャシー(猫)
クリスマスの歌を口ずさみながら、陽菜子はモミの木の飾りつけをしていた。
色とりどりの長いモールをモミの木に巻き付けて、小さな点滅灯が並んだイルミネーションライトを付ける。靴下や小さくきらきらと輝く小箱を付け、モミの木の天辺に星を付けたら完成だった。
「よし、できたあ!」
イルミネーションライトのスイッチを付けてみる。
ちかちかと、控えめな明かりがいくつもモミの木を照らした。
「ニャア!」
とたんに、飼い猫の、アメリカンショートヘアのキャシーが奇声を発した。興奮した様子で、モミの木に突進する。
「あ、ちょっと」
陽菜子はうろたえた。
キャシーはお構いなしにモミの木に飛びつき、ワシャワシャとモミの木を揺らしている。
「ああ……」
陽菜子から嘆息ともつかない声が漏れた。
キラキラ光るモミの木が、格好の標的に見えたのだろう。
飾りは無残にも散らされた。
「こら、キャシー!」
怒ってみるが、キャシーはどこ吹く風といった様子で、足で首元をかいた。気にもとめていないようだ。
「来年からは、ちょっと考えなくちゃね」
陽菜子は「はあ」とため息をつき、一瞬のうちに飾りがボロボロになってしまったモミの木を見つめた。