表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/99

18 縦書きが出来るノートの購入【現代恋愛】 美貴

 衝動買いだった。といっても、それほど高いものを購入したわけではない。100円ショップの文具コーナーを眺めていたら、新しいタイプのノートが入荷していたのだ。


 今まで使っていたノートは5ミリ罫の横向きの線が入ったものだったのだが、文字を書き込むには少々小さすぎると美貴は感じていた。仕事に使うだけだったらそれでも我慢して使う。だが、今回美貴がやりたかったのは「縦書きで文字を書いてみる」ということだった。つまりは小説が書いてみたかったのだ。


 美貴の恋人は現役の作家だ。お互い付き合うようになってしばらく経つが、美貴の彼氏である「犬養芳也」が描く小説はどれも素晴らしく、面白かった。彼ほどの作品が書けるとは思えない。が、彼の小説の文庫本を手にするたび、美貴は思うのだ。最近、縦書きの文字を書いたことがない! と。


 仕事では手帳にメモ書きをすることはあるが、すべて横書きだ。そして、職場でパソコンを打つ時も基本は横向きに文字が流れる。その生活を淡々としていると、縦書きの文章を読む行為そのものがとても愛おしく感じるのだった。


 そこに来て、この新しいノートを目にした。ノートの端っこに「MADE IN JAPAN」が書かれているそのノートは、右からも左からも使える仕様で、縦線と横線が入った10ミリ方眼罫になっている。つまりは縦書きの文章も書くことが可能なのだ。


 つい買ってしまった。これから何を書くのかは全く決まっていない。何でもいいのだ。相談すれば、彼も美貴に合ったジャンルを教えてくれるだろう。縦書きの文章を作るという目標が達成できるなら、何でも良かった。


「ふふっ」


 いい買い物をした、と美貴は上機嫌だ。彼の文庫本と同じ縦向きの文章を書く。そのことが、美貴にとっては密やかな喜びだ。新たなる作家の卵の誕生だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ