17 地球お母さん【童話】
芙美香ちゃんは不思議な女の子でした。
ベランダのプランターに咲いている花々とお話ができるのです。道ばたにありんこがいれば彼らともお話します。
踏みつぶされた毛虫がいれば、その子のためにわんわん泣くこともありました。
そんな芙美香ちゃんが、母の日にお母さんにプレゼントを持ってきました。それは小さなクローバーの種でした。
「お母さん、あのね。クローバーちゃんが種をすこし分けてくれたの。四つ葉が生えるといいねって」
「そうなの? ありがとう」
お母さんは芙美香ちゃんの不思議なお話に慣れっこです。種は大事に空いているプランターに捲いて水をやりました。
そんなベランダに、そよそよと優しい風が吹きました。土は水をたっぷり吸って、色が濃くなりました。
「クローバーちゃんが言ってたんだけどね。お母さんのお母さんをたどっていくと、草でも人間でもみんな育ててくれているのが地球さんなんだって。地球さんはみんなのお母さんなんだって」
「ふんふん、確かに。地球はみんなのお母さんだねえ」
「母の日に地球さんに何をしてあげたら喜ぶんだろう?」
「そうね。ゴミ拾いでもしましょうか」
「うん、ゴミ拾いする!」
「それから、昔の人は大地への感謝のしるしとして、心をこめて歌ったり踊ったりしていたの。芙美香も誠心誠意を込めて歌と踊りを地球さんに贈りましょ」
「うん! 地球お母さん喜んでくれるかなあ!?」
芙美香ちゃんは笑顔になって、お母さんとゴミ拾いをしました。
ゴミを拾った後は、いつも遊んでいる公園に行って、芙美香ちゃんは歌や踊りをしました。
誰もいない公園だと思っていたら、芙美香ちゃんは地面に向かってぺこりと頭を下げました。
ありんこたちが見ていたようです。
芙美香ちゃんはありんことさっそくおしゃべりしました。
「お母さん。ありんこさんがね、わたしたちはみんな、地球お母さんの子どもですって」
「そうねえ」
お母さんは優しくうなずいてくれるのでした。