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15 冬の朝【ヒューマンドラマ・旅】 フレデリック

 寒村の朝。夜に降り積もった雪が、ぽつんぽつんと立つ木々に花を添えている。軒先に出来たつららが朝の日光に当てられ、ゆっくりと水に還元していく。

 穏やかな朝だった。ここは山深くにある村の、古民家を改修した宿。都会の喧騒に疲れた人々が今日も集う。

 フレデリックは歓喜していた。

 長身のフレデリックにはすこし短い布団。(たたみ)の上の、布団と固めのそば殻枕(まくら)に、障子を通して優しい日の光が差している。

「oh、二度寝したくなりマース」

 清潔な匂いのする布団に顔をうずめ、フレデリックは満足のため息をついた。

 彼はニューヨークの日系企業で働くホワイトカラーの勤め人だ。最近はスマホやパソコンのインターネットを通じて、逐一、仕事付き合いやプライベートの付き合いに追われる毎日を送っていた。

 息をつく暇もなく鳴り響く呼び出し音。更新し続けなくてはならないSNS。そこで、彼は考えた。すこしの間だけ、行方知れずになりたい! と。

 旅行先を物色し、日本人の同僚の話も聞いてみて、彼は日本の田舎に興味を持った。そうして一人旅の日程を組み、旅行中はオンラインの活動を休むことを事前に公表し、今、ようやくその願いが叶ったのだ。

 朝の光を受け、軒先のつららの先に、静かに水がしたたり落ちていく光景は、見ているだけで心がなごんだ。村の雪景色はとても美しい。

 この宿は、フレデリックと同じようにこの日本の田舎に魅せられたオーストラリア出身のオーナーが始めたもので、外国人旅行者には定評のある宿屋だ。

 朝ごはんの時間になるまで、フレデリックはこの静寂の中にある村の景色をぼうっと見つめていた。都会では得られないものがこの雪景色にはあった。

「田舎、最高デース」

フレデリックは一人、呟いた。  

 

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