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おまけ17:釣り

「さーてお昼も食べたし、釣りにでも行こうかな」


「…………」


「…………」


「…………」


「これからダムに釣りに行くんだけど、誰か一緒に行く人ー?」


「…………」


「…………」


「…………」


 ……おい、誰か返事くらいしろよ。

 行かないなら行かないって返事をしてくださいよ。



 前にみんな一度ずつ連れてったんだけど、超絶楽しかったらしく二度目はなかったようだ。


 リリセラとか「トーヤ様と一緒ならどこで何してても楽しいですよ」、って言っちゃうタイプじゃなかったの?


 所詮、女子供にはわからん世界の趣味だよ。

 いいよ、一人で行ってくるから。


 ……ホントに行くけど誰も来ないの?





 ダムへ着くと既に人が居た。3人居た。1人はオットーさんだ。

 まあ、分かってて今日にしたんだけどね。


「やっほー」


「あっ、アシュクロフトさまっ!」


 オットーさんよりも先に別の人が声を上げる。

 んーと、誰だっけこの人? 見たことあるけど。


「えーっと、どちら様でしたっけ?」


 釣りをしていた他の人たちもなんやなんやと集まってくる。

 すごく野次馬っぽく感じるね。普通に寄ってきただけなのに。


「ほらっ、前にアシュクロフト様に助けていただいたっ」


 うん、このテンションだし、前に助けたことがある系だとは思ったんだけど……。


「いや、俺に助けられたことのある人って、大小合わせたら町の半数を超える位に居るし……」


 ある意味、俺の世話になってるという意味では全員助けてるし。


「アシュクロフト様は手当たり次第に助けすぎなんですよ……私の時もそうでしたし」


 オットーさんも苦笑いを浮かべる。

 そういえば、オットーさんも俺に助けられた内の一人だった。嫁さんの方だけど。



「あ、嫁さんで思い出した。前にリアカーで拾った一家の父親さんだ」


「はいっ! そうです、その時のです!」


 嫁さんって言葉でピンと来た。

 なんか買い出しの帰りに拾った人だ。


 って言ってもリアカーで拾って、そのまま町に居着かせるのも何回かしてるんだけどね。


「まあまあ。積もる話は釣りでもしながらにしましょうよ」


 残る一人は釣りの常連さんだ。割と見かけることが多い。

 今日は居ないみたいだが、他にも何人か常連が居る。


 つまり、それだけ俺の町も趣味に時間を割く人が増えてきたってことだ。

 生活に余裕があれば、人は趣味に時間を使うもんなんだな。いいことだ。


「どっこいしょ」


 真っ平らな石の椅子に座る。

 どう見ても人工物なのは、もちろん俺が釣りをするために作ったからだ。


 だって釣りには椅子欲しいし、無造作にやってると俺の近くに人が寄ってくるし。

 近くで釣りをされて糸が絡まるのが嫌だからね。距離をある程度離して椅子を置いておくと便利なのだ。

 会話は出来る程度の距離にしておくけどね。


「そういやオットーさん達はエサは何使ってるんです? 虫?」


「ですね。その辺で拾ってきたのをちぎって使っています」


 だよね。

 普通は現地調達するよね。


 でも、虫をエサにするとリリセラが嫌がるんだ。

 虫を食べた魚なんて食べたくないって。


 普段魚が虫を食べるのはしょうがないけど、虫をエサに釣った魚は嫌だと。

 直前に虫をムシャムシャしてるのは嫌だと。


「ってことで練りエサを持ってきました。欲しい人ー?」


「ありがとうございます。魚も喜びます」


「いや、魚は喜ばないでしょ」


 そうして4人並んで釣りを始めるのだった。

 ぼんやりと、雑談しながら。







 数時間もすると飽きた。

 雑談をしながらの釣りだけど、長々としていると飽きが来る。


 別に飽きやすい性格をしてるわけじゃないけど、一日中やるってのはちょっとね。


 釣果は5匹とそれなりだった。

 前はもっと釣れたんだけど、魚も釣りという危険なものを警戒し始めたようだ。

 人に慣れたのかな? 雑談してるから音で警戒される?

 こういうのをスれるっていうんだっけ?



「じゃあ俺は先に帰りますんで、今日はどうします?」


「自分は3匹お願いします。町長はどうです? 釣果は」


「私は6匹でしたね。なので、2匹ほどお願いします」


 常連さんとオットーさんが食いついてくる。

 別に釣りにちなんだ訳ではない。たまたまだ。


「なんの話ですか?」


 初参加の父親さんには当然だがわからないようだ。


「俺が来た時は最後に釣り以外で、魚を捕まえてあげるんだよ。持って帰った時にたくさんいると、家族に喜ばれるでしょ? 見栄ってやつですよ」


「なるほど、そういうことなら私も4匹程お願いします」


「お任せを」


 えーっと、3の2の4だったか、計9匹だ。

 ん? 魚は9尾とか言った方がいいのかな?

 まあいいや、生き物なんて全部”匹”でいいでしょ。ややこしい。


 それにしても結構多いな。

 やっぱり男の人って見栄っ張りなのね。なんつて。

 さあ、ささっと捕まえて帰りますか。今日の料理当番が料理を始めてしまう前に。




 そして、持ち帰る俺のバケツにも8匹の魚が入っていた。

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