おまけ11:開発の話
「トーヤ様、靴屋さんの方で問題が発生してます。よろしいですか?」
「問題ってなんのだ?」
自宅でリリセラと開発の相談。そんな日暮れ。
家に仕事を持ち帰る大人みたいでちょっと格好良い感じ。
実際に格好良いかどうかはこの際無視だ。
「大きさ違いの靴を沢山用意しても売れ残るものがあるので、この売り方はやめたいと」
現代の売り方と同じ事してもダメだったか。
人口も段違いだし、日本だと売れ残ったら別のとこに集めたりリサイクルなり別の手段が取れたもんな。
この辺、真似するだけじゃダメなのが大変だ。
「じゃあ前みたいに、サンプルだけ置いて注文来てから作る方式に戻すか」
「そうですね。そちらの方が良いと思います」
服ならS、M、L、LLの4サイズにオーダーで十分なんだけど、靴はサイズが結構細かいし難しいな。
ただ、こっちの方式だと欲しい時にすぐ買えないのが難点だ。
「あと、サンダルみたいなちょっと位大きさが違っても履ける靴は、複数置く売り方でいいかも」
「わかりました、伝えておきます。あと、靴底の素材でもっと良いものは無いか? などの要望が来てますね」
素材か……、結構細かい所にこだわり始めたな。
「やっぱコルクがいいんだけど余ってないからな。素材は、おいそれと増えないから難しい」
コルクはビンとかの容器に使うから、余分がなくて困る。
地球のように金属の蓋が作れればいいんだけど、サイズが合わなくてパカパカになるからな。
俺が作れば出来るけど、俺が居ないとどうにもならないってのはダメだ。
というわけでその案は却下。
「では、今まで通り柔らかい木を加工して使う。ということでよろしいですね?」
「そうだな、とりあえずしばらくはそうしよう」
ゴムもないし、そうするしかないだろう。
新しい素材の開発はちょっとまだ手がつけられてないから。
地球じゃゴム以外に靴底って何使ってたっけ?
「ご主人達なんの話ー?」
「げ、アンコ」
満を持してアンコの登場だ。
これで話の脱線確率も急上昇。
「お? なんかまずい?」
「いや、不味くはないかな。町をもっと豊かにする為の相談だよ」
「アンコさんもお話に混ざりますか?」
アンコの適当な意見はインスピレーションを刺激することもあるし、まあいいだろ。混ざってくれ。
問題は脱線事故が発生することだ。
「聞くー」
「あ、特に何か口を挟むつもりはないのね」
とはいえ気になることがあったら何か言うだろ。
アンコはとりあえず放置の方向で話のつづきだ。
「靴の方で他に要望はあるか?」
「靴の方はもう大丈夫です。次はお風呂ですね」
お風呂? 風呂屋がどうしたって?
「お風呂を個人で作った結果、肌が真っ赤になる人が出たそうです」
個人の相談か。
開発の相談とはちょっと違うが、町のことなので無下にはしない。
「あー、それはきっと生水だからだ。売ってる飲み水と風呂屋の水は浄水してるから平気だけど、川の水とか溜池の水をそのまま風呂にすると肌弱いやつはそうなる場合もあるはず」
俺は魔法で水を用意してたから濾過とかしなくても菌とか平気だったし、ファミリー内に肌の弱い子は居なかった。
それにお湯と言っても、風呂のお湯は40℃とかだから煮沸もできてないだろうし。
菌は関係なくて成分自体がダメなのかな?
アレルギーの仕組みとかよくわからないから、いまいち原因がわからないな。
とりあえず、そのアレルギーっぽい人は『エーデルワイス』してみて、それから様子見だな。
「ご主人ご主人、生水って何?」
「お魚さんが住めるお水のことですよ、アンコさん」
大雑把な説明をしますね、リリセラさん。
あながち間違ってないと思うけど。
「魚は住めるのに人は入れないの?」
「入れるよ。入れるけど肌弱いとアレルギーかなんか起こすだけだから」
「人はお魚さんじゃないですからね」
リリセラも適当な事を言う。
「今日はお魚? やだー」
「今日はお肉ですよ。今ノイエさんが作っていらっしゃるんじゃないですか?」
「匂いはまだしない」
「では、今は別のものを作ってるんだと思いますよ」
うん、綺麗に話が脱線したね。
話も脱線したし、今日はもういいか。
続きは明日にしよう。
「よし、アンコとリリセラ。飯ができるまでなんか遊びでもするか。ノイエが怒らないように静かなやつ」