表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/8

2

一部修正 2019/11/22

大きめのドアの前でドレスを直して大きく息を吸ったロゼッタは思いっきりドアを開けた。


「お父様!ロゼッタ、今参りまし…た…?」


勢いよく開いたドアを見て蕩けるような笑顔になった父エドワードは手を広げて娘を迎い入れた。ソファーにいる客人にロゼッタは戸惑いながらも父のもとへと行った。


「よく来たな。」


そう言って父は娘に頬ずりをした。


「お父様ったらくすぐったいわ。ところでこの方々はどちら様ですか?」


そう言ってソファーに座って二人の様子を静かに見ていた二人組(親子)を見る。


「これは失礼した。最近ずっと娘に会っていなかったものでつい。」


申し訳なさそうな顔はせず、彼は席に着いた。ロゼッタも父に勧められるままに席に着き、親子と対峙した。


「お父様、たった2日会っていなかっただけよ。そんなんだったら私、結婚できないわよ。」


冗談のように父にそう言うと、一瞬冷たい空気が流れたが、それも気のせいだったかと思われるほど直ぐに穏やかな空気となる。


「そうだな。今のうちだなぁ。お父様!と言って嬉しそうに遊びに来てくれるのも。お父様は悲しいぞ。」


「まぁ、お父様ったら!」


コロコロと可愛らしく笑う娘を見て少し悲しげな顔を見せた。いつまでも茶番を続けるわけにはいかないため、エドワードは真剣な表情になった。


「では、本題に入ろう。」


そんな、父の姿はこっそり覗き見た仕事の顔だった。


「お待たせしましたね。エインズワース伯爵。娘のロゼッタです。」


「ロゼッタ=オースティンです。」


「いえ、とんでもない。ロゼッタ嬢。初めまして。私はブライアン=エインズワース。そしてこれは息子のアルフレッドです。さぁ、お前も挨拶をしなさい。」


しかし、アルフレッドは俯いたまま反応を見せない。痺れを切らしたブライアンは、ロゼッタとエドワードに「申し訳ないが、息子はどうも人見知りのようで。それに、ロゼッタ嬢が美しいため、照れているようだ。」などといい、場を取り繕った。しかし、ロゼッタにはどこか暗い雰囲気を感じ取ることができた。エドワードは特に気にした様子もなく、「うちの娘は可愛いからなぁ」などと言っている。が、今はいいが、この先ずっとこのような状態なら頂けないなと付け加えた。暗にこのままでは婚約がなくなる可能性もありうると言うことである。


「ロゼッタ、彼との縁談が決まった。と言ってもまだ婚約だがな。」


ロゼッタは周りの友達か徐々に婚約してきているので、自分もいずれ来ると思っていた。やはり私にも婚約の話が来たのね。と納得していた。


「彼が…ですか。よろしくお願いします。」


ロゼッタは婚約者にそう言い、握手を求めた。しかし、アルフレッドはやはり微動だにしない。


「こら!アルフレッド。すみません。いつもはしっかり挨拶をするのですが、きっとロゼッタ嬢が可愛くらしいので恥ずかしがって…」


「いや、大丈夫ですよ。わたしの娘はそんな事で気を悪くするようなものではないしな。」


エドワードがそう言うとますます慌て始めたエインズワース伯爵。半ば無理やり、ロゼッタとアルフレッドは握手を交わした。ロゼッタは引きつりそうになる顔をどうにか堪えて、微笑んだ。とりあえず今日は顔合わせだけで十分だなと言い、エドワードはエインズワース伯爵を帰らせた。


ロゼッタは帰って行く、アルフレッドを見てあの男と同じ髪の色だったなと思った。

この国は他の国よりもいろんな人種を受け入れている。大昔こそは平等だったが、何時からか、色の無い銀髪や紫色の髪は蔑まれてきたらしい。

前世でも珍しい色だったが、神秘的で神聖なものだとされていたはずだった。

現代は差別こそ表立ってないものの、一度一般化された差別は、やはりそう簡単になくならないものだった。


「ロゼッタ。さっきの婚約だが、嫌なら断ってもいい。別に私はロゼッタが望むならば恋愛結婚してもいいと思っているんだ。」


「お父様、私、まだ彼とお話をしてないわ。だからまだ、決められない。もしかしたら、気が合うかもしれないわ。話してもいないのに、気が合わないとか、婚約したくないとか、可笑しいと思うの。だから、大丈夫よ。」


ロゼッタは笑顔で言った。前世では全てを諦めて、たった一人に頼っていた。現実から目をそらすように。そうしても何も変わらないとわかっている。だから、向き合わないのは嫌だった。


「お父様、とりあえず私、仲良くなれるように頑張りますわ。」


ロゼッタがそう言うとエドワードは微笑み「そうしなさい。」とだけ言った。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ