表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/8

1

「お兄様!見てください」


そう言って勢いよく扉を開けて飛び込んできたのはまだ幼さの残る黒髪の少女だった。


手にはテスト用紙が握られている。


「どうしたんだい?あぁ、愚問だったね。また、満点だって聞いたよ。流石だね。ローズ」


そう言ってローズと呼ばれた少女ロゼッタの頭を撫でて褒めるのは17,8くらいの青年だ。ローズの兄レオナードだ。褒められたロゼッタは恥ずかしそうに、くすぐったそうにはにかんでいる。しかし、眉を下げて、困ったような顔で兄に話しかけた。


「あのね、お兄様。私…」


「ロゼッタ〜!お父様が呼んでるわ〜」


そう言って扉から見えたのは彼女の母であるアリシアだった。


「あっ、お母様!分かりましたわ。お兄様、後でローズのお願い聞いてね?」


最後にドアから顔を出して兄に一言言うと走って去っていった。


「ロゼッタも大きくなったわね。」


アリシアはロゼッタの後ろ姿を見ながら言った。


「母上、本当にローズを彼らの元へ嫁がせるおつもりですか?」


レオナードはロゼッタが消えていったドアの先にいるアリシアに尋ねた。


「ええ、それが一番いいのよ。」


「それはロゼッタに…ですか、それとも…」


「あの子のためよ。それ以外に何があるっていうの?」


「貴女はあの女に悪いことをしたという罪の意識から逃れたいがためにロゼッタを…」


「黙りなさい!ロゼッタは…あの子は分かってくれるわ。聡明ですもの。では、私は失礼します。」


アリシアはこれ以上話すことはない。否、何も言わせないというように去っていった。



残されたレオナードは


「ロゼッタのため、か……」


と呟いた。



『あの子は何を望むのだろうか』



誰もいなくなった部屋で自嘲じみた声がただ虚しく零された。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ