燐寸(マッチ) 修正版
こちらは台本を小説に書いたものです。
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――嗚呼、さむい――
吹きゆく風が、ひんやり冷たく変わってく。
レースのブラウス。
赤いすかぁと。
お外はすっかりもう暗い。
黄色い大きなお月様。
ずっとこちらを見つめてる。
冷たく湿った赤茶の煉瓦。
港の壁に寄りかかる。
一本も売れないわ。
一本も売れないの。
それでも風の冷たさが、お腹がすくのを忘れさす。
ねぇ叔父さん。
燐寸はいかが。
一本買ってくださいな。
綺麗な燐寸。
明るい燐寸。
奥のほうまで見えるのよ。
何本だってありますから。
まずは一本擦って、観ませんか。
嗚呼、なんて温かい……。
体の芯から温まるよう。
もう一本いかがです。
今日はタクサン残っているの。
優しい叔父様、一本いかが。
体の奥まで観得たでしょう。
お母様が待っている。
お父様も待ってるの。
弟も死んだ。
妹も死んだ。
だから 叔父さん。
燐寸を買ってくださいな。
擦れて燃えてる燐寸の火。
赤いすかぁと鬼灯に変わる。
いえいえ、それはいけないわ。
だからお願い。
燐寸を買ってくださいな。
お父様に叱られる。
お母様に叩かれる。
どうか、お願い。
燐寸を買ってくださいな。
リズムを考え、少しだけ冒頭部分を書き直しました。
10・23 またもう少し変えました。
リズム良く読めるようしてみました。
こんな大正浪漫 いかがでしょうか。