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プロローグ
(私、死ぬのかな)
薄れゆく意識の中で藍はそんなことを思った。
(あ、チヨさんに祐樹も)
声が聞こえる。
藍は感じた。今皆が自分のために必死に助けようとしていることを、動かない体の奥で感じとっていた。
彼女の体からは血が溢れ、自分の思考も働かなくなっていくことを彼女は感じていた。彼女は動かない自分の体にそっと呼びかける。
(せめて、もう一度皆に挨拶したかったよ)
出るはずもないが、涙が出そうになった。
「藍坊! 藍坊! お前、俺の刃で逝くんじゃなかったのかよ。こんなのなしだぜ」
原田の声が一際大きく聞こえてくる。藍はごめんね、と呟きたかった。
祐樹が何か重大な決断を下していた。松本の声がする。彼はずっと謝っていた。何をそんなに謝るのかと藍は思った。
そして、意識が遠のいた。ふわりふわりと体が宙に浮く感触がする。
――ありがとう。
最後に彼女はそう心の中で呟いた。