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ドラゴンブレイカー  作者: kairi
ディールム
3/7

依頼


俺は今、グレイウルフの討伐のためにディールムの北に来ている。


ディールムの北側は、魔物がよく出る草原と、その向こうにある森によって形成されている。


草原では薬草が多く取れることが知られており、新人の採集系の依頼にうってつけらしい。


そこに出る魔物のランクはFからDといったところで、いたって安全な狩場だ。

特筆すべき厄介な魔物はまだ発見されていない。


森ではCから、奥に行けばそれこそSランクの魔物にも会うことができるらしい。

まだ未発見の魔物や、とてつもなく強い魔物がいるという話も聞いた。

当然そんなやつらは人里に出ることも少なく、討伐依頼はあまりでないという話だが。


これらの話を集めた俺は、初依頼達成のためにディールムの北門を出て、辺りに広がる草原の中をのんびり歩いていた。

天気も良く、暖かいので、まるでピクニックみたいだ。


俺は自分の実力を過信することは決してしないつもりだ。

どんな強さのやつにも全力で相手するつもりだが、この程度なら警戒するのも馬鹿らしく感じる。


初めての依頼はグレイウルフ五体の討伐。

ランクこそDだがそんなに難しくはなさそうだ。




一時間ぐらい草原を歩くと、何回か魔物に遭遇することになった。

ハウンドドッグやホーンラビットなど小動物系の魔物たちだ。

見た目が犬やウサギに似通ったところがあって少しやりにくい。


特にホーンラビットはその傾向が強い。

なんと、その見かけは普通のウサギとほとんど変わらないのだ。

額に小さな角があるのを見落としてしまえば間違いなく攻撃されるだろう。

……間違えて抱っこしないように気をつけよう。


それらをやりすごしてまたしばらく歩いていると、遠くから魔物の群れが近づいてくる気配がした。

目視でそれを確認すると、どうやらグレイウルフが10体ほど集まってこっちに向かっているらしいことが分かった。


俺がしばらくその場に留まってその群れを見ていると、グレイウルフたちも俺に気づいたようだ。

群れが散開し、俺を囲むようにしながら走ってくる。動きも散漫なものではなく、警戒心が伺えるものになっている。


たかだか一人の冒険者にも油断しないとはさすがはグレイウルフだ。

俺の強さが分かっているわけではないはずなのにな……。

ただ、本当に警戒するんなら俺から離れて逃げていくべきなんだけど。


そのまま俺が動かないでいると、グレイウルフたちは俺のすぐ近くにまでやって来て予想通り俺を囲むような陣形を取る。

そして、体勢を低くしながら隙を伺うようにじっとこっちを見てくる。

俺が不用意に動けば、次の瞬間にはやつらの歯が俺の体中に刺さっているだろう。


意外なことに、近くで見るとグレイウルフというのはなかなかに大きい。

予想では街にいる中型犬程度の大きさだと思っていたが、実物はそんなものではなかった。

尻尾まで含めると全長が二メートルに届きそうで、なおかつ筋肉質な体。

顎にズラリと並ぶ切れ味のよさそうな牙。

突き刺したものを離さないという爪。


可愛さなんてこれっぽっちも感じられない野生の姿。

確かにこの草原で生き抜いてきただけのことはある。


見たところ普通の駆け出し冒険者にとっては一体であっても十分脅威になるレベルのやつだ。

まぁ、あくまでも普通のやつらにとってだけどな。


俺が失礼なことを考えていると分かったわけではないだろうが、さっきよりもグレイウルフたちの殺気が増しているように感じる。

今にも飛びかかってきそうな構えだ。


そんな状況も俺にとっては退屈だ。

いつまでも構えてないで早くかかって来ればいいのにと思ってしまう。


「いつでも来いよ。お前らレベルなら何体いても怖くないんだからな」


その言葉が戦闘の引き金になった。

緊張感に耐えられなくなったのか、俺の声に驚いた一体のグレイウルフが飛びかかってきた。


俺はすぐさま剣を抜くと、体を斜めにして軽く突進をかわし、その側面に剣を叩き込んで真っ二つにする。

その後ろ姿を見ることなく、襲いかかってくるグレイウルフを次々と地面に沈めていく。

首を落とし、腹を切り、時には四肢のいずれかを切り離す。


魔法は使わないと決めているため、俺の動作は至極単純になる。


故郷の村での修行の時からそれは変わらない。


躱して、斬って、蹴って、また斬る。

ただそれだけでいい。

それだけでいつのまにか目の前には死体の山ができている。


今日もいつも通りだ。





ー☆ー☆ー☆ー☆ー☆ー






数分後、俺の前にはグレイウルフの見るも無残な亡骸が十体残っているだけだった。


「もう終わりか。さすがにDランクだな」


この分だとしばらく暇になりそうだと呟きながら討伐証明部位の爪を剥ぎ取る。


エルト村での修行の成果の一つは剥ぎ取りが素早く丁寧になったことだ。

多くの魔物を倒しても時間がかからないように仕込まれたのだ。

こういう場合を見越してのことだろう。

やはりお婆様はすごい。


結局そんなに時間をかけずに全ての剥ぎ取りを終えた。

これといってやりたいこともないし、まだ日が高いが一度ディールムに帰ることにした。


そんなに時間はかからないし他の依頼を受けれるかもしれない。


あ、そうだ。

魔法の修行も一緒にやろう。

帰りの時間を短縮できる。


そう考えた俺は身体強化の魔法を自分にかけ、走ってディールムの街に帰ることに決めた。


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