明かされた事実
ご気分を悪くさせる表現があります。
気に障る可能性があるので、もしお嫌な方は避けてください。
あれから私は日々の買い物や通院以外はほとんど外に出ず、好んで閉じこもる生活を送っていた。
変わったことと言えば、リビングや部屋のあちこちに増えていく何冊もの妊娠中の心得のHow to本やネットで取り寄せた妊娠中に良い食材たち。胎教CD、そしてどうしても我慢できずに買った数着のベビー服だった。
◆◇
彼に恋をした日から、この身体にいる恐怖よりも彼との生活や赤ちゃんが愛おしく感じる日々になっていた。
現金なものだ…。最初は緊張や恐ろしさで生きることすら放棄しようとしていたくせに…。
でも、今まで報われない恋ばかりをし、自分を愛してもらえることがほとんどなかった私にはこの恋した彼との結婚生活は胸がつまるほど、嬉しいものだったのだ。
彼は相変わらず、深夜に帰り、朝早くから出社する忙しい生活を送り、休日出勤することもままにあったが、それでも帰ってもくもくと私の食事を残さず食べてくれていた。
休みの日には、一緒に出産準備の講座にも出てくれ、胎教をし、散歩に付き合ってくれる。
本当に良い夫で、妊婦友達からは羨ましがれるばかりだった。
ただ、身体を気遣かってくれ、一緒に生活をともにしていても私は未だに彼から抱きしめられたことも、スキンシップもされたことがなかった。
私から彼に近づこうとしても、彼は厭い話題を逸らすように私から身体を避けた。
私は未だに彼の笑顔を見たことがなかった。
◇◆
毎日テレビや新聞から、住所等以外は自分の常識が通じる世界という確信を持ち、恐る恐るながら今日も買い物に来ていた。
買い物に来ても考えるのは、赤ちゃんのこと、要のこと…。
妊娠中の運動も兼ねて足を伸ばし都心の大型CDショップに寄る。胎教にはモーツアルトが良いって聞くけど、今度は和楽器でも聞いてみようかな…とCDショップの中をうろうろしていた、その時…
「優子、優子じゃねえか!!」
初めて聞く声の主がなれなれしげに肩に手をかけ、自分の方に振り向かせた。
「どうしたんだよ!お前。ケータイに連絡してもシカトしやがって。どんだけ放置してんだよ。」
初めて見る顔が顔を顰めて、私を問い詰める…。どうしよう…。どうやらこの身体の女性のお知り合いらしい…。今まで買い物に出ても大丈夫だったから、気を抜いていた。ケータイを持っていることすら知らなかった。
上手く調子を合わせることも出来ず、人違いを装う…
「すいません…。多分人違いをなさっているかと。ちょっと存じ上げないので…。」
目に力を込め、腕に力をいれなれなれしく抱かれていた肩をはずす。
向かいあった彼は今時の若者…という格好やスタイルをしてこの体の女性の何の繋がりがあるのか判別出来なかった。
ただ、綺麗な顔をしており軽そうなモテそうなタイプだなという印象を受けた。
「はっ?俺だよ、俺。静也だよ。あれだけ付き合いがあったのにそれはなくない?俺がお前間違うわけないじゃん!」
彼は人違いという私の言葉に納得せず、余計に距離を詰めよって来た。
「すいません。本当に、知らないんです。人違いです!」
もう周りを気にする余裕もなく、詰め寄る彼から必死に距離をとる。
一瞬間が空き、訝しげに私を見た後、彼は一人納得したように笑いながら言葉を発した。
「は~ん。そういうことね。確かに、お前着ている服も変わって印象も変わったもんな。金づるの旦那に気に入られようと服もイメチェンして、俺とも距離をおきたいってわけね。ちょっと前まで旦那の帰宅が遅いからって妊娠中でも俺らを呼んで夜遊びしまくってたヤツがよくやるね。女って怖っ」
「えっ…」
目の前の人物が発した言葉が理解できない…。金づる? 妊娠中に夜遊び…?
「何を…?言ってるの…?」
聞こえた言葉が信じられず言葉が震えをともない口から出る。
「さんざん遊びに付き合ってやったこの静也様に向かってお前もよく言うね。まぁ、それでこそ優子だけど。その妊娠したハラだって合コンで見つけた一流企業のエリートに狙いをつけたお前がはめて出来ちゃった結婚仕組んだくせに。
旦那も否定して堕胎させようとしたけど、お前の策略勝ちで寿退社、優雅な専業主婦だわなぁ。
そのくせ、旦那がお前に愛情がなくてほっとかれると、今度は俺たちを呼び出して旦那の金で夜遊び三昧。旦那との交渉がないからってカラオケで俺がお前をさんざん愛撫してイカせてやったのも忘れたのかよ。」
「えっ…?」
目の前の人物から明かされたのは用との信じがたい事実だった…。
最後に気分が悪くなるような表現があり申し訳ございません。ちょっと身体の女性の人間性が見えてきましたね。