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私のなすべきこと  作者: 睡華
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生きる意味


あれから数ヶ月彼から正体を怪しまれ疑問をぶつけられることはない。




というか、機会がないのだ。




少しずつわかったことだが、彼は大手の一流企業に勤めていて、あの若さで異例の出世の課長という地位らしい。


あの若さというのは目算だが…。




住んでいる家も都心の一等地にあり、所謂高級マンションというヤツだった。



私は、結婚、妊娠の為寿退社…という身の上らしい。家族以外と会う必要がなく、必死にこの女性を生きる場面が減ったことが唯一の救いだったが、そんな状況なため、家にいても彼は深夜の帰宅になりほとんど話しが出来ない現状だった。





自分の知っている世界のようで知らない世界が怖く、私は必要最低限の買い物以外家に閉じこもる生活を続けていた。












◇◆◆◇









この家に来て初日、いつのまにか出勤準備をしていた彼を送り出し、見つけたパソコンで私はネットをし続けた。



自分の名前、家族の名前、友達の名前、自分の住所、自分の最寄り駅、自分の知っている事柄…。あらゆるものを検索し続けたが、でた答えはerrorだった。






この世界で私の住んでいた住所はなく、地図には全く違う名前が載り、自分の名前、友達の名前、果ては知っている芸能人の名前まで検索したがひとつもヒットするものはなかった。私の現実はここでは非現実になっていた…。




「嘘だ!!」




ガタン!!


あまりのことに椅子から落ち、現実を拒否する。

もう頭がおかしくなりそうだった。喋る言語から違うのか、通貨が違うのか、法律が違うのか、ここは日本なのか、ここは地球なのか…全てを信じられなく、信じられるものがなにもなく異世界に放りだされたようだった。








ここで初めて、やっと初めて私は自覚した。ここは私にとって異世界なのだと…。









自覚し、どうしようもなく無力感に苛まれた…。



太陽は昇り、窓から見える空は青く、私は呼吸しているのに…ここが私の知っている地球ですらないことがどうしようもなく怖かった。ここに私の知っている確かなものは一つもなかった。





椅子から転げ落ちた体制で仰向けになり、空を見つめ呼吸をし続ける。私に出来ることはこれしかなかった。私がこんなに世界が落ちてきたような衝撃を受け、生きる気力をなくしても太陽はそこに存在し、翳っていった。







「よく台詞にある、あなたが死んでも地球は回る…。なんか違う感じで実感しちゃったな…。」




太陽が陰り、日が落ちて夜が来ても私は動けなかった。もうどうでも良かった。彼に不審に思われて糾弾されても、追い出されても、どうでも良かった。







追い出されたら…どこへいこうかな…。もう立ち上がることさえできないよ…。







そんな感情で染められた時、お腹からどん!と衝撃がきた。

「な、何?」




思わず起き出し、お腹に手を当てる。訝しげにお腹に手を当てているとまた、どん!という衝撃がきた。



「あ!!」

その時、やっと思い出した。この身体は私一人のものではなく、もう一つの命が宿っていることを。





じっと息をつめ、お腹に手を当てていると今度は先ほどより小さめにどん、という衝撃が来た。



赤ちゃんが。自分がここにいることを一生懸命主張していた。小さなちいさな命がここにあることを…。



その時、私の心に宿ったのはこの子を守らなきゃ…という感情であった。


この小さなか弱い命は、私が生きるのを止めたら…守るのを止めても死んでしまう。この子には私しかいないのだ。







その時、世界にたった一人だった私に小さな味方が出来たような気がした。

この子のために何でもしなきゃ…。そう思った。



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