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私のなすべきこと  作者: 睡華
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初めての夜


大きな試練だった母らしき人の夕飯の手伝いをどうにかこなし、他人の気詰まりな家族の団欒に居つづけ、やっと自分の部屋という場所へ逃げ込んだ。






黙り込み小さく微笑むだけの私を、皆訝しげに見たが具合が悪いのだろうと思ってくれたようだ。





この部屋にいても、全く自分の部屋だという気がせず落ち着かない。




都会的なセンスで纏められたインテリア。クローゼットを開ければブランドに疎い私でも知っているようなハイブランドの服が並び、鏡台には沢山のスキンケア用品や装飾品などが並べられている。

 


この身体の女性はブランド物を見に着け、いつも身なりに気をつかっている、お洒落に無頓着な私とは正反対な女性だったらしい…。





この部屋はまさしく借り物のようで、私には息苦しさしか感じられなかった。






トントン…

「どうぞ」


ドアを開け、物怖じすることなく入ってきたのは夫…らしきひと、要だった。



「なに?」

「いや、お前…体の具合はどうだ?」

彼は私をまっすぐに見つめ、その強い瞳で私の心まで見ようというように質問をした。




「うん…。なんかいきなり調子悪くなったことしか覚えてなくて…。心配かけてごめんね。」

自分を守るためとはいえ、知り合ったばかりの人に嘘をつくことが心苦しく、視線をそらして言葉を出した。






「そうか…。」



視線を床に向け、彼の表情は見れなかったが温度のない返答を返し彼は部屋のベットの中へもぐった。




「えっ!?ここで寝るの?」

あまりのことに調子を合わせることも出来ず、彼を振り返って見てしまう。




「何言ってんだ。ここに泊まったらいつもここで寝るだろう?お前も早く寝ろ。」


彼は私の言葉を訝しげたが、そのまま眠りに入ろうとしている。




どうしよう…。会ったばかりの人と一緒のベットで眠るなんて絶対に出来ない…。



でも、別々に眠るっていったら疑問を持たれてごまかせないかもしれない。まだ何もわからない状況なのにここで疑いを濃くするのは拙い…。









電気を消し私は覚悟を決め、壁際を空けてくれていたベットの空いたスペースへ身体を滑り込ませた。



彼は反対側を向き大きな背中だけが視界に写る。



いつもどうやって寝ているのだろう…。いつもと違う行動を起こし疑問が膨らんでいくのが怖かった。赤ちゃんを授かったんだからきっと仲が良いんだろう。



想像をし、知らない他人の背中に緊張し動悸が止まらないごまかし彼の背中にそっと額をつけた。






額から暖かさを感じる。今日会ったばかりの彼の背中から与えられる暖かさと安心感に緊張と疲れから開放されて眠りへと落ちていった。





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