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私のなすべきこと  作者: 睡華
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思いがけない



もう…本当に訳がわからない…。混乱のなか、この人が嘘をついていないとだけはわかったが、それ以外はまったくわからなかった。




要は…私を憎んでない? あの女性と付き合ってない? 

要は…私とこの子を思ってくれている…?




沢山の疑問と期待そして裏切られたときの脅えが心をいっぱいにする。

信じたい…。信じたい…。信じたい…。信じたい!!






でも、やっと一人で立てたのに。この身体で生きる覚悟も許しも出来たのに


もし…期待して裏切られたら…もう力が抜けて、今度こそ立てなくなりそうだ。





飛び交ういろいろな感情で混乱している私に構うことなく禰宜は言った。


「今日はやっと二人で来てくれたんだろう? いつもあいつは日曜日のこの時間に来ているからな。


 俺もあいつに会いたいと思って待つために来たんだ。 


 俺も一緒に待たせてくれよ。」


私の混乱をさらに増やすように禰宜は驚きのことを口にする。





要が来る! 要がここに向かっている、今この瞬間。





とっさに私がうった行動は此処から逃げ出すことだった。




こんな混乱した感情のままどうして会えよう。

まだ心の整理が全くついてないのに。




それに…要は私と会いたくないかもしれない…。




混乱する頭と面と向かって拒絶される恐怖から私は逃げ出すことしか考えられなかった。




働かない理性をそのままに感情のまま動く手足に身を任せようとした私を禰宜の言葉が止めた。


「あ、来た来た! おーい!」


彼は本当に親しみを込めて誰かに言葉を投げ、手を大きく振っている。





かすかな視界の端からは禰宜の動く身体しか見えないが、じゃり、じゃりと白砂利を踏みしめてくる誰かを私の耳は聞いていた。





じゃり、じゃり…。だんだんと近づいてくる足音。

怖さから禰宜の影に隠れるように小さくなり、後ろを向く私…。



そんな私を気にしたふうもなく、白砂利を踏みしめる音は絶えず近づいてきた。




じゃり。

白砂利を踏みしめる音が消える。






禰宜以外に誰かの存在を背中が感じる。


「いやぁ、いつも通りの時間だな、お前は。」


「そんなことはないさ。 あんたも元気そうでなによりだ。」

要の…要の声がする…。




私に気づいた様子もなく親しげな男同士の会話は続く。


「この前あったばかりで、何か変わるわけもないだろうが。まぁ、今日はいろいろ嬉しくて機嫌が良いがな。」


「それはなによりだ。何か良いことでもあったのか?」


「あぁ。心の憂いがやっと晴れたのさ。あんたのおかげさ。」


「俺のおかげ? どういうことだ?」

要は意味がわからないという風に言葉を返す。





「お前…というより、お前たちだな。やっと一緒に参拝に来てくれて嬉しいよ。奥さんが元気で、お腹の子も元気そうで本当に良かった。」


「お前たち? なんであんたが優子とお腹の子が元気だなんて知っているんだ?」


要の言葉は懐疑的とともに、鋭さを増して禰宜に問いかける。

あぁ、言わないで。見つかってしまう…。




「そんなの歴然だろう。目の前にいるんだから。」

要が息を呑むのが聞こえた気がした。




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