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私のなすべきこと  作者: 睡華
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ささいな違和感


あれからも何事もなく私の日常は続く。








朝起きて、ご飯食べて、仕事して、お腹の子に語りかけ、眠り、朝が来る。

ここ最近当たり前の日常に私の身体は自動で動く。





でも、あの光景を見たときからどこか焦燥感や緊張感が張り付きつつも要への思いである柔らかい部分があった場所が乾いて…乾いて…カラカラになり悲鳴を上げているようだった。





よくある失恋の痛みだ…と言い訳をする。









いつかきっと笑い話に出来るだろう、と思いつつも自分でこの渇きや痛みは一生抱かえていくものだと何故かわかっていた…。













そんな心境で普段どおりにしなければ…と余計に緊張していたからだろうか…、最近ふと視線を感じるようになった。




仕事でのおつかいや仕事帰りの帰宅時、ときには休日にも…。

この容姿やお腹が大きいこともあり視線を集めるのは慣れていたが、そのちょっとした視線とかではなく…常に付きまとうような、強い視線だった…。


視線で思うのは美樹ちゃんだが、彼女の強くも潔い視線とは違い、もっとじっとりとした物言わぬ視線のようで、視線を感じたときにそちらに目を向けても誰もおらず、心地悪さだけが残った。










「さやちゃん、次これお願い~。」

「はい。」




店で働いているときだけは、仕事に集中し視線のことを忘れられた。あの視線も店のなかまでは追ってこず、今の私は店のなかだけが安心できる場所になっていた…。




しかし…自分でも気がつかないうちに徐々に私の精神はすり減らされ、それは確実に身体にも表れるようになっていた…。













「はぁ…。」

忙しさの山を越え、とうとう身体がもたず奥のすみっこでしゃがみこむ。




最近不安から不眠が続き、それにともない常に頭痛がともなうようになっていた。




もともと太れない体質なのか妊娠していてもお腹以外はスラッとした型をしていたが、それが痩せているという体型まで体重が落ちた。


お腹にいる赤ちゃんのためにも

(これでは駄目だ!)とわかってはいつつもご飯が喉をとおらなかった…。

悪循環が続いていた。













あぁ凄く…今自分はこの世界に一人だと感じる…。

例えば、恋人、親、仲のいい友達に少しでも相談できれば不安は解消できここまで追い詰められなかったかもしれない…。



でも、私は一人だ。





要もいない、本当に甘えられる親もいない、名前も身分も偽っているからここで働いている同僚にすら私は何も相談できなかった。





全て自分で抱え、自分で解決しなければならなかった。

全て自分ひとりで。






「誰か傍にいて……。」

微かな、本当に小さな望みが知れず口からこぼれる…。











(そろそろ戻らなきゃ変に思われる…。)

動かなきゃ…と思うのに、身体が動かない…。



「嫌だ…。動いて!私はこんなことで負けるわけにはいけないの!」

なにもかも自分ひとりで抱え込む不安と弱音を吐きそうな自分を叱咤するために強い口調で自分を叱った。







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