私の選択
バッ
囲んでいた腕を開放し、驚愕を浮かべながら私と視線を合わす。
「何があったんだ…? 俺が嫌になったのか…?」
要の声は冷静さを保っていたが、声は固く瞳には強く動揺が色濃く浮かんでいる…。
本当にこの人は要だろうか? 今の今まで抱きしめることを避け、この女性を厭い堕胎までさせようとした…要だろうか?
彼の表情と聞いてきた事実が重ならず、胸に困惑が浮かぶ…。やっぱりウソなんじゃないだろうか…?
そう思いたい気持ちでさっきの言葉を撤回したくなってくる。
でも…自分でもこの事実を確信している。彼は確実に優子を厭うている…。
だからこそ、口にした…。離婚という言葉を………。
◇
声が枯れるほど叫び、天をうらんで叫び続け、力つき身体を横たえた私に唯一残っていたのは要への愛情と二人の子どもへの変わらぬ愛しさだった。
(この子は私と要が愛して出来た赤ちゃんではない…。この身体の女性との子どもだ…。
そして…私がこの状況な限り要は私自身を見る機会は一生訪れず、愛してくれることもないだろう…。 )
それでも、私はたった数ヶ月にしかならない時間でも要を愛し、このお腹にいる赤ちゃんも変わらず愛していた。
心の底から………。
要への愛しさ、子どもへの愛しさばかりが心を巡るなか…、私は自分のことより要への愛しさが募り、彼を幸せにしたいと思った。
彼を愛のない結婚から解放したいと思った。
要は堕胎を促すほど、この身体の女性を厭うている。
それはここ数ヶ月の手を伸ばしても避けられる身体から嫌というほど感じていた…。
本当なら赤ちゃんを彼の希望通りに堕胎させ、彼の前から姿を消すのが彼の望みだろう…。
でも…この子を愛している今となってはどうしてもこの子を堕胎する選択肢は存在しない。
この子も心から愛しているから…。
そう考えた時、こどもの命を消すのではなく、私が彼の前から消えようと思った。
愛されないまでも、彼から憎まれて生まれる赤ちゃんにはしたくないと思った。
私が全ての憎しみと罪を被るから…この子のことは生あるものとして認めて欲しい…そう思った。
要を開放して幸せにするために…、子どもに愛を与えるために…、
私はこの言葉を口にした…。
「離婚しよう…要…。」と…。