『不老』か『不死』
読みにくい話となっています、ご了承ください。
あれは、私たちが中学生だった頃のことだ。
部活が休みだったこともあって、放課後の教室でのんびりと話していたらふと、こう言ったのだ。
「不老不死、てあるよね?」
……最初は何を言い出すんだ。と思ったが、よく考えたらこれが彼女のいつもどうりだったなと思った。
私がそうだね、と適当に返すと、
「欲しくない? 不老不死。特にわたしは不死がいいな~」
また突拍子もないことを言った。
漫画の読みすぎだよ、と言おうとした時、
「じゃあ、あげようか?」
私たちとは違う声が聞こえた。教室には私たち以外居なかった筈なのに。振り返り見ると、
「実はね、一つ持ってるんだ。『不老不死』」
妙な格好をした女の子がいた。制服じゃないし、多分年下ぽかったからそう表記する。
「それ本当!?」
聞き返された言葉に、
「うん。マジモンだよ」
女の子はあっさりと応えた。
「でもさ、さっき言ったように一つしかないの」
人差し指をピンと立てて女の子は言葉を続ける。
「だからさ、半分に分けてあげるね、『不老不死』を、『不老』と『不死』に、どっちを選ぶかはアナタ達にまかせるから、決まったら言って」
そして女の子は近くにあった机に座ろうと、後ろ向きに跳んだ時、
「わたし『不死』!」
「はぅ!?」
あっさりと決めた言葉に着地を失敗してお尻を打っていた。
「いたた…えっと、アナタは『不死』でいいんだね?」
「うん!」
「じゃあ、アナタは『不老』ね」
私を指差して女の子が告げる。
いや、私は別に…と返すと、
「ダメだよ♪片方だけ余らせるなんて」
パチン。そんな音と共に女の子は急に発光した。私は思わず目をつぶってしまったので、
「それじゃ、『不老』と『不死』を半分ずつね♪」
その声を聞いて目を開けた頃には。女の子の姿は見えなくなっていた。
いったいなんだったんだろう? まさか本当に『不老』になったわけないよね?
そう私が言って彼女を見たとき、
「ねぇ…見て?」
彼女の首にはカッターナイフが刺さっていた。
かなり深いのだろう、傷口から赤い液体が溢れ出ているそれははた目に見ても分かる。即死ものの傷だ。
しかし、当の彼女は、
「こんなにしたのに、わたし生きてるよ? これどういう意味か分かる?」
つまり彼女はこう言いたかったんだろう。
「わたし、『不死』になったんだ!」
それからというもの、『不死』の彼女はやることなすこと全てが死と隣合わせになっていた。
信号機が赤になってから横断歩道を走り、何回も車に轢かれていた。
カナヅチなのに、25Mプールで息継ぎ無しで泳ぎまくっていた。
テレビを見て憧れて、指の間を包丁で行き来して刺さっていた。
ショートカットだと言って、四階から何回も飛び降りていた。
やめとけといわれたのに、ドライアイスを顔にかけていた。
ここに書くのさえ嫌になる、そんなことも多々していた。
見るのも嫌になるような傷や怪我が増えていた。そんな彼女は……今、
実験動物となっていた。
彼女の『不死』を証明する行動の数々が、多くの研究者の目に留まり、ある研究所に連れて行かれた。
今、『不死』の彼女が何をしているのかは知らない。『不死』と『不老』を分け合ってから、もう80年も経っているのだから。
少なくとも分かるのは、『不死』の彼女は今、97歳の老人だということだけだ。
死を迎えぬまま、いつまでも生き続ける。死ぬ事の無い、世にも珍しい実験動物として……
そんな私もまた、実年齢97の、見た目17歳の老人だ。
今になってなぜコレを書いているのかと言えば、この出来事に関わった。出来事の発端になった女の子に出会ったからだ。
80年前と変わらぬ私を見た、そちらも見た目に変化の無い女の子は、
「やっぱりどっちかだけじゃなくて、どっちも、が良かったよね♪」
それだけ言って、消えてしまった。
あの子が何者なのか、今となって考えるのは遅い、見た目は高校生の私の体は97歳のそれが招いた病に蝕まれている。正直、いつ逝くか分からない中、これを書いている。
ただ この言葉を 言いたくて
もし も あなたなら 『不老』 と 『不死』
どちらが
いいで――――――――――
迷烏の迷い路話、ちょくちょく書いていく予定です。
楽しめるか定かではありますが、感想いただけたら幸いです。