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13番目の証明  作者: 深緑
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ープロローグー 目撃者

雨は、まるで空が壊れたように降り続いていた。


闇に包まれた山あいを、白く濁る雨煙が覆い隠している。


山肌を切り開いて造られた巨大なトンネルの坑口は、黒い口を開けたまま暗闇を飲み込んでいた。


坑口の脇には、


『神奈川県都市交通局 相模貨物線地下化工事』


と記された工事看板が、豪雨に打たれながら風に揺れている。


周囲には掘削用の重機や工事車両が並び、雨に濡れた車体が雷光を受けて鈍く光っていた。


重機は作業の途中で時を止めたかのように並び、キャタピラには泥がこびりついたままだった。


トンネルの坑口付近では山肌が大きく崩れ落ち、濁流に運ばれた土砂が工事用道路を埋め尽くしている。


砕け散ったコンクリート片や折れ曲がった鉄筋が辺り一面に散乱し、崩落の激しさを物語っていた。


その中心に、一人の男が倒れていた。


雨に打たれ続ける身体は微動だにせず、泥水はゆっくりと男の輪郭を飲み込んでいく。


その前に、ひとつの黒い影が背中を向けて立っていた。


黒いレインコートのフードを深くかぶり、右手には、錆びた鉄パイプが握られていた。


赤茶けた錆は雨水に溶け、細い筋となって泥の上へ流れ落ちていく。


肩から滴る雨は絶え間なく地面を打ち、黒いレインコートの裾だけが風に揺れていた。


まるで倒れた男を見下ろしているようにも、助けを求める術を失って立ち尽くしているようにも見えた。


その光景を、少し離れた場所から見つめる者がいた。


息が止まる。


雨音が遠ざかる。


世界から音が消えた。


視線の先には、倒れた男と、黒いレインコートの人物。


その手に握られた錆びた鉄パイプだけが、雷光に照らされて一瞬だけ白く光る。


「……兄さん。」


震えた声は豪雨に飲み込まれ、誰にも届かなかった。


その瞬間だった。


倒れた男の前に立つ黒いレインコートの人物が、ゆっくりと振り返る。


雨粒がフードの縁を伝い、一筋、また一筋と滴り落ちる。


雷鳴が夜空を裂き、一瞬だけ辺りを白く照らした。


その光が、フードの奥に隠された顔をかすめる。


遠くからその姿を見つめていた男だけは、はっきりとその顔を見た。


息をのむ。


瞳が大きく見開かれる。


胸を締めつける激しい衝撃に呼吸が乱れる。


目の前の景色がゆっくりと滲み始めた。


黒いレインコート。


フードの奥の顔。


泥に沈む兄の姿。


意識は深い闇へと落ちていく。


豪雨だけが、変わることなく大地を打ち続けていた。



――その光景は、十五年後も一人の男の記憶から消えることはなかった。

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