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Chapter 5 討伐

レオが思わず声を漏らした。

「アイシャがカーネリカだったのかよ……」


カーネリカは肩をすくめるように笑う。

「見た目に騙されちゃダメだよ、テラと同じだね」


テラは何も答えない。


カーネリカは楽しげに続けた。

「二人もやられちゃうなんて、君たちやるね。やっぱり部下に欲しいな。どうだい?」


テラが静かに言う。

「貴様が人間を保護するなら付いてくることを許可する」


カーネリカは小さく笑った。

「噛み合ってないなぁ、やっぱりダメか」


よろめきながら、ヴァンが立ち上がる。

「テラが許可しても俺が許可しねぇ、お前が今まで何人殺したと思ってんだ」


カーネリカが首を傾げる。

「人間の格言であるよね?お前はナントカの数を覚えてるか?ってさ」


ヴァンが踏み出す。

「てめぇ!」


テラが制止する。

「ヴァン、無理をするな。お前にはもう戦闘力はほとんど残されていない」


ヴァンが歯を食いしばる。

「テラ……」


テラはカーネリカへ向き直った。

「……こいつは私が殲滅する」


カーネリカは嬉しそうに笑う。

「やっぱそうなるよね〜。いいよいいよ、元々そのつもりだったんだ」


カーネリカが両腕を広げた。

「楽しましてくれよテラぁ!」


空間に炎弾が現れ、一斉に放たれる。

テラは疾走しながら回避する。


続けて炎弾が襲う。

軌道を読むように、ただ避け続ける。


その瞬間。


炎弾の影から、左手に炎の刃を持ったカーネリカが飛び込む。

刃を光刃で受け止める。しかしわずかに押される。


カーネリカが跳び退く。


直後、背後に気配。


カーネリカの声が落ちる。

「へへへっ」


振り返ると、空中に無数の炎弾。


カーネリカが腕を振り下ろす。

「そぉれっ!」


爆発。


煙の中、テラは左腕を上げて立っていた。

青白い防護膜が揺らめく。


カーネリカが顔をしかめる。

「なんだよあれ、インチキじゃん」


テラの足取りがわずかに重くなる。

姿勢制御の補正が入る。


カーネリカが呟く。

「数じゃダメか、質だね」


左手の炎の刃に加えて、右手には生き物のようにうごめく炎の塊を纏っている。

揺らめくというより、表面がゆっくり流動している。

それをまとったまま距離を詰める。


刃が交差する。


その瞬間、カーネリカの小さな体から横蹴りが放たれる。

不意を突かれ、テラの体軸が崩れる。


カーネリカが笑う。

「見た目がこんなだからって殴ってこないと思ったらダメだよぉ!!」


カーネリカの右手がテラの胸部へ静かに触れる。

接触の直後、空間が膨張する。


赤い衝撃波が放たれる。


――


レオが叫ぶ。

「テラ!!」


赤い光が収まる。


ヴァンが息を呑む。

「ああ……!」


テラの左胸から腕にかけて外装が溶け、内骨格が露出している。


カーネリカが感心したように言う。

「どういう奴なんだお前は? あれで吹っ飛ばないなんて頑丈だなぁ」


溶けた部分が再生成を始める。

姿勢保持のための微細な補正動作が続く。


テラは空中のカーネリカを見上げた。

数秒、動かない。


静かに言う。

「ドミナスのデータがもう少し欲しかったが。お前は危険だ、終わりにする」


足先に光が集まり、石畳が軋む。

周囲の塵が外側へ押し広げられる。


カーネリカの瞳がわずかに細まる。


突撃。

凄まじい速度。


右腕の光刃がカーネリカを両断――

しかし身体は液体のように分離し、直後に元の形へ戻る。


カーネリカが叫ぶ。

「この脳筋がぁ!!」


反撃。

露出した骨格に再び赤い衝撃波が叩き込まれる。


テラが地面へ叩きつけられる。

被弾した骨格部には明らかに異常を示す青白い光が飛び散る。


ヴァンが焦る。

「おいおいやべぇぞ」


レオも叫ぶ。

「ヴァン!なんとかなんねぇのかよ!」


ヴァンが吐き捨てる。

「テラで勝てないのにどうしろってんだよ!」


カーネリカが余裕を見せる。

「さすがにこたえてきてるね、そろそろ終わりかな」


地面に伏したテラの指がわずかに動く。

視線はカーネリカからヴァンへ向く。

 

テラが叫ぶ。

「ヴァン!」


わずかな間を置き、続ける。


「あいつを死ぬ気で六十秒止めろ!」


「な! マジか!?」


「このままだと負ける。だからやれ!」


ヴァンが笑う。

「くっ……人使いの荒い女王様だぜ!上等だ!」


カーネリカが向き直る。

「またレムリアを出すのか?まぁどっちでも良いけどさ!」


衝突。

ヴァンが受け止め、地面が陥没する。

「こいつ、このなりでなんて力してやがる!」


ヴァンが食い止めている間、テラは無事な右腕に集中する。

表面の形状が変わり、”何か”を生成している。


時間が経過する。

ヴァンの動きが鈍る。


その瞬間――


「ヴァン!私に向かって走ってこい!」


「なっ!またこの展開かよ!」


ヴァンは言われるがままにテラの方向に疾走する。それを追うカーネリカ。


テラは動かない。


ヴァンがテラの近距離に迫ったとき、テラは前に踏み出し、自らの脚を跳ね上げる。


「ぐはっ!」


ヴァンの体が上空へ打ち上がる。


射線が開く。


右腕はエネルギー砲へ変形している。

周囲の空気が収束し、霜が石畳を走る。

反動に備え、足元が地面へ固定される。


カーネリカの表情が変わる。


発射。


閃光が空間を満たす。


――


光が消える。


レオが呟く。

「ど、どうなった?」


ヴァンが起き上がる。

「ててて」


霧が晴れる。


そこには巨大な氷の山が切り立つようにそびえ立っており、その先端には氷漬けのカーネリカが静止していた。


テラが静かに言う。

「絶対零度だ」


広場に音が戻らない。

風だけが瓦礫を転がした。


【現在の保護対象:2人】

【増減:±0人】

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