Chapter 3 結成
青年は大剣を下ろし、改めて女を見た。
「……助かった。俺はヴァンだ。あんたは?」
「テラ」
名乗りは短かった。それ以上を付け足す気はないらしい。
横から少年が顔を突き出す。
「ねぇ、さっきのやつ倒したってことはさ。ねーちゃん、人間の味方だよな?」
ヴァンが眉を寄せる。
「おい、レオ」
テラはわずかに間を置いた。
「人間は保護対象だ。脅威は排除する」
レオはすぐに頷く。
「ほら味方だ!」
「決めつけんなっての」
ヴァンはため息を吐き、視線を戻す。
「あんた、人間じゃないだろ。何が目的だ?」
「私は人類を管理するために派遣されたアンドロイドだ。お前たちの言葉でいうと――機械人形か」
「……?」
レオが首を傾げる。
「機械人形って、ねーちゃんが?」
「そうだ。私は生命体ではない。私の身体は人工構造体で構成されている。自己修復機構、環境適応機能、人工知能を備える。人間の生理構造とは根本的に異なる存在だ」
「意味は全然わかんないけど、人間にしか見えないぜ? まぁ、服装はかなり変わってるけど……」
「私を人間だと感じるのは、私の擬態が成功しているからだ」
ヴァンが割って入る。
「管理するってのはどういう意味なんだ?」
「この星の人間達しか生成しない戦略資源が存在する。安定的な生成のためには、人間達をある程度管理する必要がある」
レオは腕を組み、しばらく考えてから言う。
「よくわかんねーけど、女王様になるみたいなもん?」
「そうだな、本質的にはそれで間違っていない」
テラの視線が、地面に残った灰へ向く。
「この星の支配種は人間だったはず。しかし反応数が極端に少ない。こいつらが原因か?」
レオが低く答えた。
「そう、ドミナスだよ。俺たちは隠れて生きてる。見つかったら終わりだ」
わずかな沈黙が落ちる。
「そうか。私に記録されている情報にはドミナスの情報はない。しかし、人間が減ることは私の任務にとって致命的な問題だ」
その言葉に、レオが身を乗り出した。
「だったらさ! 仲間を助けるの手伝ってくれよ!」
ヴァンがすぐに割って入る。
「おいレオ、まだ味方だと決まったわけじゃないぞ」
「このねーちゃんの強さ見ただろ? しかも実際にギラードをぶちのめしてる。それで十分じゃねーか」
「だからって、こんな得体のしれない奴に頼むのかよ」
「どうせこのままじゃ仲間は助けられないぜ。こんなぶっ飛んだ日、今日まであったかよ?」
ヴァンは黙り込む。
風が瓦礫の隙間を抜けた。
短い沈黙の後、ヴァンは息を吐く。
「俺からも頼むぜ。仲間を助けてほしい」
テラは迷わなかった。
「人間をこれ以上減らすわけにはいかない。案内しろ」
「やったぜ!」
テラが歩き出す。ヴァンは肩をすくめて後に続いた。
レオが振り返る。
「ところで、なんて呼んだら良い? 女王様だからテラ様?」
「テラでいい」
レオはにやっと笑う。
「フランクな女王様で助かるぜ!」
三人は崩れた街の奥へ進んでいく。
その日、世界はまだ変わっていない。
【現在の保護対象:2人】
【増減:+2人】




