表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/20

Chapter 18 解放

ヴァンの一撃を、レグナートは槍で受け止めた。


金属が激しくぶつかり、火花が散る。


ヴァンはすぐに距離を取り、慎重に構え直す。


レグナートがわずかに眉を上げた。


「ヴァンといったか……せっかく拾った命を捨てる気か」


ヴァンは口の端を上げる。


「やっと名前を覚えたみたいだな、光栄だぜ。

簡単に勝てるとは思ってねぇが、最初から負けるつもりもねぇんだよ」


レグナートは槍をゆっくり回した。


「お前の相手をしている暇はない。腕試しならやめておけ。死ぬぞ」


「うるせぇ!」


ヴァンは構わず踏み込み、斬りかかる。


だがレグナートから見れば、テラとの戦いとの差は明白だった。


レグナートはその場からほとんど動かない。槍をわずかに操るだけで、ヴァンの大剣を次々と受け流していく。


刃が届かない。


(くそっ……勢いで斬りかかれたけど、まるで通じねぇ)


レグナートが鼻で笑う。


「威勢は良いが、実力が伴っていないな」


攻防が続く。


ヴァンは何度も踏み込み、斬り込む。しかし槍は常にそこにあり、道を塞ぐ。


そして次の瞬間。


レグナートの槍の持ち手が、鋭く振り抜かれた。


腹部に叩き込まれる。


「……ぐはっ!」


ヴァンが苦悶の声を漏らす。


身体が折れ、膝がわずかに沈む。


レグナートは静かに観察していた。


(どうした……あの時見たお前は無謀というより臆病に見えた。

 何か手があるから向かってきたのだろう。早く見せてみろ)


ヴァンは歯を食いしばる。


このままでは万に一つも勝てない。


それははっきり分かった。


ヴァンは苦笑する。


「へへ……やっぱ無理あるか……。

でもよ、最初から人の手を借りて戦ってたんじゃ、一生びびったまんまだからな」


レグナートがわずかに首を傾げた。


「……どういう意味だ」


ヴァンは息を整える。


(テラ……力を借りるぜ)


その瞬間。


ヴァンの身体が淡く発光した。


次の瞬間、体内から銀色の流体金属が吹き出す。


それはヴァンの身体を覆い、形を変えながら装甲を構成していく。


頭部。胸部。腕。脚。


瞬く間に鎧が形成され、大剣の刃までも覆っていく。


完成した鎧の隙間から、赤いエーテルが噴き出す。


レグナートが目を細めた。


「ほう。なかなか面白いことをやるではないか」


ヴァンが大剣を構え直す。


「今度はそう簡単にいかねぇぞ……」


――遡ること外征前日


訓練場。


ヴァンが肩をすくめる。


「なんだよテラ、訓練場って。今日の明日で特訓してもらっても変わらねーよ」


テラはあっさり言った。


「そうだ。少し鍛えたところで大幅な向上は見込めない」


ヴァンが眉をひそめる。


「だったら何だよ」


テラは言う。


「だから、お前に私の一部をやる」


ヴァンは一瞬固まる。


「……どういう意味だ?」


「やってみた方が早い。動くな」


テラの手がヴァンの頭に置かれる。


その瞬間。


テラの手から、銀色の流体金属が流れ出した。


「ぐぉっ!」


「動くな」


流体金属はヴァンの頭部から身体へと流れ、全身を覆っていく。


息ができない。


しかし流体は徐々に身体の内部へ染み込んでいく。


やがて。


「っぷはぁっ!!」


ヴァンが慌てて顔を触る。


「おいおい、なんだテラ。何したんだ」


テラは平然としていた。


「私の外装材の30%をお前に与えた。今は体内に吸収されている。

だが安心しろ。いつでも分離はできるし、用が済んだら返してもらう」


ヴァンが目を丸くする。


「テラは大丈夫なのかよ」


「多少戻すことは可能だが、与えた分の全部は無理だ。だから私の性能は若干落ちる」


ヴァンが頭を掻く。


「で、俺はどうなるんだ……」


「普段は何も変わらない。強力なドミナスを相手にする場合に使え。

強さが欲しいと強く念じれば、お前の思考に反応して具現化する」


ヴァンが目を輝かせる。


「試してみてもいいか……」


「もちろんだ。レグナートと対峙したと想像してみろ」


ヴァンは目を閉じる。


「……」


次の瞬間。


身体が発光した。


流体金属が噴き出し、ヴァンの身体を覆う。


鎧が形成され、大剣に機構が追加される。


ヴァンは息を呑んだ。


「す、すげぇ……」


テラが頷く。


「よし、うまくいったな。次は使用だが、ここから先は覚悟しろ」


「え?」


テラは光刃を構えた。


「私が打ち込むから、私を倒す気で来い」


ヴァンは笑った。


「それならいつもやってるぜ!」


テラが一瞬で踏み込む。


その瞬間。


ヴァンの鎧と武器が反応した。


「よし……ってうおおっ!?」


鎧はヴァンの動作に先んじて反応し、身体を導く。


衝撃。


ヴァンの大剣がテラの光刃を受け止めた。


さらに身体が勝手に動く。


反撃。


テラの足が地面に沈んだ。


ヴァンが驚愕する。


「な!いつもならこんなことは……」


テラは静かに言う。


「そう、いつもならできない。しかしそれはお前の力を限界以上まで引き出す。勝手に戦うと言っても良い」


ヴァンは苦笑した。


「なんだそりゃ。じゃあ俺は寝ててもいいってことか?」


テラは首を振る。


「戦闘はお前が考える必要がある。ある程度は自動で動くが精度は高くない。

それに、制御しなければお前の身体に構わず無理やり動くぞ」


ヴァンが肩を回す。


「確かに……ちょっと動いただけで身体がきしむな」


「今のお前が使い続けられる時間はせいぜい10分だ。装備解除後は動けなくなる。

必ず10分以内に終わらせろ」


ヴァンは頷く。


「分かった。色々あるにせよ強くなってるのは間違いねぇ。ありがたく使わせてもらうぜ」


そしてふと聞く。


「ところでこれ、名前あんのか?」


テラは首を振る。


「決めていない。お前が決めろ」


ヴァンは少し考える。


「神の使いの武具……イージスとかにするか。どうよ?」


テラはあっさり言った。


「それが良いならそう呼べ」


「お、おう……」



――レグナートとヴァンの対峙場面へ


ヴァンは深く息を吐く。


(10分だ……それ以上はかけらんねぇ)


ヴァンが踏み込む。


「行くぜ!!」


ヴァンはイージスを解放し、レグナートへ突進する。


レグナートの瞳が細くなる。


「……っ!」


ヴァンの動きは先ほどとは別人だった。


速く、鋭い。テラに劣らない。


レグナートは全力で槍を振るう。


互角の攻防。


刃と槍が高速で交錯する。


レグナートは理解が追いついていなかった。


(装備でここまで変わるのは聞いたことがないぞ……どういう魔法装備だ……)


後方でジェニスが驚愕していた。


「あれが……ヴァンなのか……!」


しかし。


レグナートの全身に魔力が満ちる。


「あまり調子に乗るなよ……!」


槍の速度がさらに上がる。


ヴァンの攻撃が弾かれる。


一転、ヴァンの攻撃はレグナートにことごとく潰され、徐々にヴァンが押され始める。


「くそっ……近づけねぇ……!」


次の瞬間。


槍が鋭く突き出された。


「ヴァン!」


ジェニスが飛び込む。剣で槍を逸らそうとする。


だが。


圧倒的な力の差。

ジェニスは大きく弾き飛ばされた。


「ジェニス!」


レグナートが呟く。


「命拾いしたな……相変わらず運が良い」


ヴァンの目が血走る。


「……てめぇ!!」


その隙。


ヴァンが踏み込む。


渾身の一撃。


レグナートは槍で受け止める。押し切れない。


だが、ヴァンは覚悟の表情で叫ぶ。


「なめんなよっ!!」


ヴァンがイージスの出力を一段階上げると、赤いエーテルが膨れ上がる。

それはヴァンの力を増幅しているようだが、同時に身体を蝕むようにも見えた。


大剣が押し込まれる。


レグナートの槍が押される。


「なんだとっ!」


「うおらぁあっ!!」


ヴァンの大剣が槍を弾き上げる。


その隙。


振り抜いた大剣をイージスが反対方向に強制的に振り抜く。


横薙ぎ。


レグナートの脇腹に直撃する。


鎧が砕ける。


レグナートの身体がすさまじい勢いで吹き飛ぶ。

城の外壁に激突し、ようやく止まる。


静寂。


ヴァンが肩で息をする。


「はぁ……はぁ……」


レグナートを見る。


動かない。


「や……やったのか……」


その瞬間。


イージスが限界に達し、鎧が崩れる。


ヴァンはその場に倒れ込んだ。


大広間には三人が倒れたまま。


静寂だけが残った。



――その少し前、城の最下層


テラの前に、一体の魔族が立っていた。


「お前がダルマシオンか」


痩せこけた小男。土気色の肌。

人の形をしているが顔は爬虫類のようだ。

杖を持ち、老齢を感じさせる。


不敵な笑み。


ダルマシオンが呟く。


「レグナートめ……足止めもできんとは」


そして言う。


「いかにも余がダルマシオンだ。何用かな」


テラは迷いなく答える。


「人間たちを解放してもらう。ついでにこの地からも去ってもらうぞ」


ダルマシオンは眉をひそめた。


「人間たち?何のことだ」


テラは言う。


「周囲の人間をこの地にさらっているはずだ。殺したということか」


ダルマシオンは肩をすくめる。


「何のことかと言っている。人間集めなど趣味ではない」


テラはその声色を聞き、違和感を覚えた。嘘を言っているようには聞こえない。


テラは言う。


「どのみちここを解放せねば確認できない。去る気はあるか」


ダルマシオンが笑う。


「さすがにそれはないな。お前たちは誰かが家に訪ねてきて、出ていけと言われたら出ていくのか?」


テラは頷いた。


「もっともだ」


右手に光刃が形成される。


テラは静かに言った。


「殲滅する」


ダルマシオンの目が細くなる。


「小娘が……図に乗るなよ」


【現在の保護対象:1,948人】

【増減:±0人】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ