4-2. 種族移動時代:人間種族の統合
大陸の冷涼化は北方も例外ではありません。そのため大陸北方の草原地帯が荒れてきました。冬を中心に草が減り、十分な数の家畜を養えなくなりました。
そこで騎馬民族の中には南下を始める部族が出始めました。将来を考えて豊かな草地を追い掛けようとする一派です。
他方で先祖伝来の土地から離れられなかった部族も居ます。彼らはやがて草地を食べ尽くして滅んでいきました。
やがて接点の無かった農耕民族と衝突します。
農業で栽培していた畑を豊かな草地と認識してしまったのでした。騎馬民族は畑で放牧を始めてしまったのです。
農耕民族と騎馬民族はこうして衝突しました。そこで騎馬民族は農耕民族と言う共通の敵を前に各部落が連合しました。
そうなると農耕民族は太刀打ちできません。対立を嫌う農耕民族が乱暴な騎馬民族の傘下に入る形になりました。
これは農耕民族にも利点があります。騎馬隊に畑全体を魔物や猛獣から守って貰う事になりました。
ここに農耕民族と騎馬民族が統合された人間の王国が誕生しました。同時に農耕民族と騎馬民族の差別の始まりでもあります。
騎馬民族は農耕民族支配の道具として宗教を利用しました。その為に宗教改革を先導します。
まず苛烈な戦神を太陽神と習合しました。地水火風の四神は唯一神に仕える天使にしました。天使は各々の専門分野で先を読んで唯一神に奏上します。唯一神は各々の意見を元にして判断を下します。その際には必要ならば冷酷な判断も辞さない苛烈さを持っています。
全体の価値観としては豊かな社会を肯定します。豊かな中で禁欲的な生活が神の指示であるとしました。そして豊かになる為には略奪も手段の一つです。但し仲間内での奪い合いは禁止です。
神の指示に従順であれば死後は天上の神の国へ召される事になります。天の国は豊かで永遠不変です。
【メタ註:終末や審判、復活、ラグナレク等という概念はありません】
なお遺体は火葬します。焼いて煙にする事で天の国へ送ります。
【メタ註:復活の概念が無いので遺体の保存は不要です】
こう言った内容を積み重ね、宗教的または支配等に都合の悪い部分は削除して、教義を整備していきました。しかし多少は矛盾点が残ってしまいます。そこで宗教会議を何度か開催する事になりました。都合の悪い部分の洗い出しが目的でしたが、教義に関する議論の習慣が根付く事になります。
こうして成立した宗教を農耕民族に徹底させていきました。村毎に教会を作り、宗教の専門職即ち神職を置きました。
農耕民族からの税で騎馬民族の生活に余裕が出てきた事から、騎馬民族から神職を出す余裕が出てきたという側面もあります。
始めは反発が大きかったのですが、分かり易い現世利益を提示する事で徐々に浸透していきました。具体的には病人収容と貧者救済です。貧者救済の延長線上に孤児院が設置されました。
新しい宗教の浸透と同時に村の冠婚葬祭も取り仕切るようになりました。
散発的などんちゃん騒ぎ等を纏めて宗教的意味を踏まえて整理整頓しました。祭りは年に4回、天使と対応させました。
新年祭。冬至に行います。冬至は現地の暦で元日になります。地の天使の祭りです。朝は教会で日の出を祝い、午後は家で家族とゆったり過ごす時間になります。
春分祭。春分に行います。現地の暦で3月末頃になります。
【メタ註:春分は地球歴では3月21日頃ですが、これは極めて恣意的な設定だったようです】
春分祭は水の天使の祭りです。冬の保存食の残りを食べ尽くして騒ぎます。同時に男女の婚約発表を行います。25軒程度の村なら毎年2組前後の筈です。
収穫祭。現地の暦で6月末頃です。大麦の収穫後になります。火の天使の祭りです。今年の収穫を神に報告します。同時に春の婚約に基づいて結婚式を挙げます。婚約から3箇月の間に重婚でない事を調べておきます。
祈年祭。現地の暦で10月初頭です。麦畑の農作業開始の前になります。風の天使の祭りです。今年の豊作を神に祈ります。冬を越す為に豚や牛を潰すので、保存できない内臓を主に食べ捲ります。
宗教だけでなく食べ物も統合が発生しました。主に農耕民族の食物を騎馬民族が受け入れる形です。農耕民族から税を徴収すると同時に、騎馬民族はその食べ方も農耕民族から取り入れました。その過程で血の滴る生肉と馬乳酒と羊乳酒は消滅しました。
逆に農耕民族が受け入れた騎馬民族の食物としてはヨーグルトが挙げられます。




