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記憶島  作者: 左夏詩萌野
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プロローグ

 目を覚ますと見慣れない部屋にいた。具体的言えばうつぶせに倒れるように。

昨夜の記憶を探ろうとするも意識がはっきりしない。身体は重りをつけられたかのように重く起き上がることができない。寝起きは悪くないはずだ。改めて当たりの観察を始める。何とか首だけを動かして見れば部屋は広く20人ほど人が入ってもまだ十分にスペースがあるだろう。部屋の隅には机が3段にも積み上げられておりその奥にある窓ガラスからはうっすらと光が差し込んでいる。外の天気は昨夜降っていた雨がまだ続いているのだろう、ぽたぽたと打ち付ける雨音が聞こえてくる。そこまで考えてようやく頭が働いてきたのかその場所が教室であることに気が付いた。ふとそこで視線が一つのものに吸い寄せられる。何かの影が揺れていた。なんだよという疑問はすぐに消えていく。なぜ俺はここにいるのか、そんなことも思い出せないまま誰かの影に見下ろされている。その事実にようやく現実が追い付いてきた。乾ききった喉から情けなく漏れてくる小さな呼吸音、全く動いてくれない身体とは違い早鐘を打つ心臓の音、二人だけの教室の中で聞こえてくるのはそれだけ。

 どれだけ経っただろうか、陰に動きはなくただ時間だけが過ぎていく。影の主に見つからないようにこっそりと身体の下で指先の感覚を確かめる。大丈夫だ、今なら動ける。ぐっと力を入れて身体を転がすようにして寝返りをうつ。はたから見れば大きな赤ちゃんのようで情けないけれどぜいたくを言える状況ではない。そして転がってようやく影の正体が目に飛び込んできた。

「えっ」

声にならないとはこのことだろう。そこにいたのはクラスメイトだった。

ゆらゆらと体を揺らしながらそこにいた。いや、いたという表現は正確ではない。なぜなら彼女は生きていないのだから。

制服姿の彼女は首をつっていた。足がプラプラと揺れてまるで洗濯物が風で揺れるようだ。

そんな馬鹿な思いと彼女は死んでいるという冷静な事実に思考がぐるぐると回転する。

昨夜何があったのか、その事実がぐるぐると頭の中で回る。

ああ、思い出した。そう昨日は……

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