亡霊?
「ふぅ…これでアリア様のお荷物は以上ですね」
コーリャが一息つきながらも元気が有り余る様子で言った。
かつての自分の部屋に改めて家具を設置したのだが、以前の部屋にかなり似せてしまった。
……ちなみに、家具設置はコーリャが手伝ってくれたおかげで、そう時間もかからず終わった。
「ええ、ありがとう。本当に助かるわ」
「お役に立てて光栄です!
―本来ならばアリア様のおそばにいるべきなのですが…レウラが屋敷の清掃に手こずっているようで、そちらに行かせていただいてもよろしいでしょうか? 」
この屋敷はさすが大貴族のものというだけあってとにかく広い。
絶対に私とコーリャ、レウラだけが暮らすには広すぎる。
そのせいでさすがのレウラも一人では屋敷の整備がなかなか終わらないのだ。
「えぇ、よろしくね。もう少し余裕ができたら使用人も増やさないとね…」
今はまだ襲撃の可能性がある以上、人を雇うにしても守衛が優先なのだ。
「その心配も無用になるよう尽力いたします!! では、失礼します! 」
「……」
相変わらずの元気さに、私も頑張らなければと元気をもらえる。
「よしっ! まずはたまっていた資料を…」
と、これまたコーリャが運んできてくれた山積みの資料の山に目を向ける。
「大変そうだなぁ…」
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「ふぅ……」
3時間ほど経っただろうか。
まだまだ山積みの資料に嫌気がさすが、これも当主としては当たり前の仕事だとやる気を振り絞る。
ふと、コーヒーの香りが漂ってきた。
見ると、机の端にコーヒーが置いてあった。
「いつの間に…? 」
疑問に思いながらも、レウラが入れてくれたのだろうかと考えながら口に運ぶ。
「――!! 」
驚きでむせてしまった。
これは、懐かしいがそこまで昔というわけでもない、毎日のように飲んでいたコーヒー。
こんな味を出す淹れ方をできるのは、一人しか思いつかない。
欲しいときに欲しいものを提供してくれた今は亡き執事、アインス――
ふと、隣に懐かしい気配を感じた。
無論、部屋には誰もいない。
いやいやいや、幽霊とか本当に無理!!
とか思いながらも、実際そこまで恐怖を感じたわけではなかった。
「ありがとう。アインス」
ふと、そんなことを口にするくらいには。