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嫌われ令嬢と亡霊執事  作者: ぬる
2/5

生還

……甲高い鳥の鳴き声が聞こえる。




どうなったんだろ…私




目を開くと、眩しい光と共に広い天井が目に入り込んできた。




「ここは…」




「お嬢様!!お目覚めになったのですね! 奥様!!」




…急に枕元で大きな声が上がった。




バタンッッ




大きな音を立ててドアが開けられ、女性が飛び込んできた。




「アリア!?よかった、目が覚めたのね?」




視界に入り込んできたのは、ふくよかな、銀髪の婦人。




「…エンリ叔母様…?」




数年前に何度かあったことがある。


人の顔を覚えることが苦手なため、思い出せた自分を褒めたい。


・・・なんて呑気なことを考える状況でもない。




「トラゴイド家が市民からの襲撃を受けたと聞いた時は、本当に…本当に、生きた心地がしなかったわ…」




エンリ叔母様は涙ぐみながらそう言った。




なるほど、私はその絶望的状況から生還したわけだ。


誰かに抱えられ、屋敷から脱出できた。


―その誰かがわからないのだが。




「叔母様、他の…お父様やお母様はどちらに?」




「……」




…空気が凍りついた。




いや、薄々わかっていた。




「お嬢様、大変申し上げにくいのですが…」




侍女が叔母様の代わりに口を開いた。




「ご家族様は、皆様、」




「お亡くなりになりました」




私が生きているだけで奇跡だということを。


------------------------------------------------------------------



「じゃあ、今後についてはまた明日話すとしましょう。食事は侍女に運ばせるわ」




現状を一通り聞いたところで、体を休ませることにした。




ひと段落付着き、今の状況を再確認する。




私は4大公爵家のドラゴイド家の一人っ子で、アリア・ドラゴイドだ。


そしてトラゴイド家は市民の襲撃により私以外殺された。


まぁ・・・この王国はうち以外の公爵家も、その上王家も腐っている。

つまるところ衰退、滅亡まっしぐらのこの国で4大公爵家なんて有名無実。

1家欠けたところで特に問題はないだろう。




正直、両親を失った悲しみというものは特にない。

というのも、私の容姿に原因がある。


黒髪に赤い目、そして極め付けに希少な魔法を使える人間。


それらが災いして悪魔の子なんて呼ばれるほどに、両親、まして侍女にまで忌み嫌われていた。



・・・アインス、執事を除いて。




異常に過保護でいつでもどこでも助けてくれた彼も、ともに屋敷で亡くなったが…




そんなことを考えていたら、侍女が食事を運んできた。




運ばれてきたのは、パンとスープという、超温室育ちの私にとっては、貧相ともとれる食事だった。




・・・しかし、無言で次々に口に運ぶ。




予想以上に空腹だった。




しばらく黙々と食べ続けていたが、段々と眠くなってきた。






バタンッ






食べ終わっていない食事を目の前に、私は睡魔に勝てなかった。

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