プロローグ
広い屋敷の中に、何十人もの怒号が飛び交っていた。
「 令嬢を早く見つけ出せ!! 」
昼間までの綺麗な屋敷の姿は見る影もない。
ボロボロな屋敷をただ一人、逃げ回っていた。
「 トラゴイド一族は根絶やしにしろぉぉっっ!! 」
父上も母上も見つからない。
「 っっ... 」
恐らく侍女のものであろう。
脱げ落ちていた靴につまずき、体が倒れる。
もう、起き上がる気力も体力もない。
誰かが屋敷に火を放ったようだ。
しばらくして、火は私の服に燃え移ってきた。
目をつぶり、死ぬ覚悟をした。
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この王国の最大派閥、4大公爵家の一つとして栄えたドラゴイド家。
その裏、特に父上の世代では領民への無理のある課税や領のインフラ調整をまともにしないなど問題は山積みだった。
町に流れる川は雨が降れば氾濫し、先々代で築いたレンガ道も今はボロボロの荒道と化している。
その結果がこれだ。とにかく領民の不満がたまりすぎていた。
この一家は滅びる結末が一番なのだろう。
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―不意に、体が持ち上げられるのを感じた。
「お嬢様! アリアお嬢様!!」
抱き抱えられて、名前を呼ばれながら、私は限界を迎えていた。