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第10話 二人はどんな関係?


 めでたくパニーラとパーティを組み、『大迷宮』の入り口までやって来た私。


 『大迷宮』は王都の中央広場が陥没して発見された場所。

 そのため中央広場にぽっかりと空いた大空洞がそのまま入り口となっており、現在では冒険者ギルド連盟の検問所まで設備されている。


 私とパニーラはその検問所の前に立ち、


「アネットお姉ちゃんは、『大迷宮』に潜るのは初めてなんだよね?」


「え、ええ……。パニーラは入ったことあるの?」


「うん。アタシは王都の冒険者だから、もう何度も潜ってるよ。『大迷宮』の中はすっごく広くて迷子になりやすいから、アタシから離れないようにね!」


「お、押忍……」


 なんだろう、普通これ言われるのって逆では?

 自分の娘……とまではいかずとも、それに近い年齢の子に迷子の心配をされるのは、なんとも複雑な気持ちになるな……。

 とはいえパニーラはパニーラで、真剣にこちらの心配をしてくれているのだろうが。


「それと、今日は第一層に挑んだら引き返そうね。アタシも第二層より下は挑んだことないから、間違って入っちゃわないよう気をつけて!」


「間違ってって……逆に間違って下の階層に入ることなんてあるの?」


「うん、全然ある。基本的に階層と階層は螺旋階段で繋がってるんだけど、ダンジョンの中にある落とし穴とか崖とか、あとは水場なんかは下層に繋がってることが多いんだ。だから注意しないと!」


 なるほど、そんな構造の場所もあるのか……。

 初心者の私なんて第一層でも簡単に躓きそうなのに、第二層以降になんて落ちたら生きて出られないと思う。

 数年後に白骨化して見つかる未来しか見えんな……。


 ――そういえば、第二層か……。

 『大迷宮』って、最深部に到達した者が誰もいないってリクハルド様が言ってたな。

 今って第何層まで見つかっているんだろう?


「ねえ、『大迷宮』って何層まで見つかってるの?」


「今のところ第五層までだよ。ただそこまで行くとすっごくモンスターが強くなるらしくて、上位ランク冒険者でも簡単に倒せないんだって」


「そ、それは恐ろしい話ね……」


 上位ランク冒険者でも倒せないモンスターとか、私なんて遭遇した瞬間に食べられちゃいそうだな……。

 経験を積むまで絶対に下層に入らないようにしなきゃ……。

 くわばらくわばら……。


 私が心の中で用心していると、パニーラはいきなり目を輝かせた様子でグッと顔を近づけてくる。


「それよりさ、それよりさ! アネットお姉ちゃんは、リク兄ちゃんとどういう関係なの!?」


「! ど、どういうって……?」


「もしかして、付き合ってたりするのかな!? だってリク兄ちゃんが女の人を家に招待するなんて、親族以外じゃ初めてなんだよ! キャー! あつーい!」


「ち、違うからね!? 私とリクハルド様はそういう関係じゃ……学園時代の先輩後輩ってだけだから! まだ付き合ってたりとかしないから!」


「……まだ(・・)、なんだ? へぇ~?」


「っ……!」


 しまった、口が滑った!

 くっ、流石はお年頃な娘さん……こういう恋愛話は絶対に聞き漏らさないか……!

 やっぱり思春期の地獄耳は舐めたらアカンぜよ……!


「――でも、良かったぁ。リク兄ちゃんにそういう人が出来て」


「へ……?」


「だってリク兄ちゃん、病気になってからずっと他人を遠ざけてたから。それに笑わなくなって、アタシともあんまり会ってくれなくなってたし……」


 ああ、そっか……そうだよね……。

 不治の病である黒肺病にかかったら、笑うことなんてできなくて当然だよ。

 きっと塞ぎ込んでたんだろうな、リクハルド様……。

 

「でも、そんなリク兄ちゃんがアタシを頼ってくれたんだ! それに久しぶりにリク兄ちゃんの笑顔を見れた! これもアネットお姉ちゃんのお陰だよ! だからアタシは、全力でリク兄ちゃんとアネットお姉ちゃんの力になる!」


「パニーラ……」


 相変わらず天真爛漫な笑顔を向けてくれるパニーラ。

 本当に、リクハルド様が大好きなんだな。

 それになんて思いやりがあって素直な子だろうか。

 なんだか私まで感化されてしまう。


 ――うん、そうだ、頑張らなきゃ。

 リクハルド様のために、なんとしても〝エリクサーの原花〟を見つけてみせる!

 グッと拳を握り、改めて決意を固める私。

 

「それで、リク兄ちゃんとはどこまでいったの? もうキスとか――」



「――オイ、さっきからうるせぇぞ! 後がつかえてんだからさっさと進みやがれ!」



 パニーラが話そうとした瞬間、私たちの背後から怒鳴り声が響く。

 驚いて私たちが振り向くと、そこには若い男冒険者の姿が。


「さっきから聞いてりゃ、冒険者のくせに付き合うだのキスだのくだらねーことばっか喋りやがってよ……。ムカつくんだっつの!」


「な、なによいきなり……あなた誰?」


「あぁ? この俺様を知らねーのかぁ? へっ、世間知らずもいたモンだぜ!」


 彼は自慢気に自らの胸をドンッと叩き、


「よく聞けや! 俺様はかのフェリクス・アールステッド様に召し抱えられし最強の冒険者コンビ――ディンケル兄弟が弟、ケヴィン・ディンケル様だ!」



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