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ハロウィンパーティー★

本編三章、秋の剣術大会後のお話です。



 長椅子に座り二人で衣装を考えるティアラとカイル。数週間後、学園の催し物で仮装パーティーを行なうそうなのだ。


「どれにしましょう?」


「ティアラが好きなものでいいよ。僕は去年やったし」


「えっ…、いいんですか?」


 つい目がキラッと輝く。実は着たい服は色々あったのだ。ちなみにカイル様は去年、ソフィアと一緒に吸血鬼兄妹をやったらしい。きっと二人共すごく似合ったことだろう。いいなぁ。私もみたかったな。


「魔女とかメイド服とか、ナース服とか…迷いますね」


「どれも似合いそうだね」


「ふふふ、迷っちゃいますね。どうせでしたら二人合わせたものがいいですよね? 猫耳とかウサギ耳も捨てがたい……」


 想像するだけでワクワクしてくる。


「この服、ティアラに似合いそう」


「え?」


 仮装一覧の参考資料を捲り、カイル様が指差したのは黒のワンピースだった。


(…ということは魔女の服かしら?)


「カイル様、ちょっと待っててください」


 ピューンと隣の衣装部屋に駆け込む。そして、お目当ての物をゴソゴソと探し出し着替えるともう一度カイル様の前に現れて見せた。



「ぱっ!こんな感じは如何でしょう?」



 とんがり帽子に膝丈ほどの黒のワンピース。両手を広げ、その場で黒いミニスカートをひらりとさせてみせる。


「これは驚いた。小さな魔女さんだね」


「えへへ、似た衣装、ありました。それと……これですっ!」


 大きな帽子を取りポンっと現れたのは白くてふわふわの猫耳だった。


「ふふふっ、驚きましたか?可愛いでしょう?ふわふわの猫耳です!」


 私は頭にちょこんと乗せた猫耳をぴょこぴょこと動かした。しかし、カイル様からは何も反応が返ってこない。不思議に思い顔を覗き込むと、彼は俯いて口元を押えていた。耳もほんのり赤くなっているように見える。


(これは成功? 気に入ってくれたのかしら?!)


「カイル様!これにしましょう!カイル様は使い魔の黒猫です!いいですか?」


「うん……。わかったよ……」


「では決まりですね!」


 気持ちが高まり思わずカイル様の前でピョンッと軽く飛び跳ねてしまった。コツコツと鳴るとんがりブーツとほうきも揃えればもう立派な魔女の完成だ。今からとっても楽しみで仕方がない。



 だから私は全く気づかなかった。その時カイル様がどんな気持ちでそこに座っていたのかなんて……。



 ◆



 ハロウィン当日。


 私はホワイトブロンドの長い髪を三つ編みにして、黒ワンピースと猫耳、しっぽ、ツンツンのブーツと魔女の姿に変身していた。箒だって持っている。最後にとんがり帽子を深々と被り、待ち合わせの中庭でカイル様が来るのを待っていた。

両手を後ろに回し、下をぼんやり眺めていると、急に視界が暗くなり咄嗟に振り向いた。


「お待たせ」

「え……?」


 そこに現れたのは大きな白い布を被ったお化けだった。でもこの声は間違いなくカイル様だ。


「おっきい…お化け…」

「うん。でもほら、脱いだらちゃんと君の使い魔だよ?」


 白い布を取り払い、顔を出すとそこには執事衣装に黒い耳をつけたカイル様だった。


「わっ…。カイル様、すごく似合ってますね!」

「ふふ、ありがとう。でもなんだかやたらと注目を浴びてしまってね」


 聞けば、先ほどまでリリアナ皇女や女生徒たちから執拗に追いかけ回されていたそうだ。確かにカイル様はかっこいいものね…。秋の大会で副隊長を務めた影響もあってか彼へのファンは日に日に増加している。


「それで急遽この格好をしたということですね」

「そういうこと…。ティアラの格好もすごく可愛い。今日は三つ編みなんだね」


 しゃがんで帽子のつばを傾けられればそれだけでドキッとしてしまう。思わず顔を隠したくなってしまったが、ふとその時、遠くの方からリリアナ皇女の声が聞こえてきた。


「まずいな……」

「こっち来そうですね。あっ!そうだ。こうしましょう!!」

「え?」


 お化けシーツをファサーッと大きく大きく広げ、二人でその中に隠れる。カイル様はびっくりしていたが今はそれどころではなかった。


「もう…、ここにもいらっしゃらない!どこへ行ったのかしら……んっ?そこの白いの!そうそう魔女の帽子を持ったそこのお化け!!!あなたのことですわよ?こちらでカイル・フォルティス卿をお見かけしなかったかしら?黒い猫耳の素敵な執事猫の格好をされてますの。ご存じないかしら?」


「…………」



 ピョコ、ピョコッと帽子を右手で揺らす。



「あら、あちらですわね!感謝致しますわ。……カイル様〜〜〜〜!カイルさま〜〜〜〜〜〜!!!!!」


 リリアナ皇女は疑うことなく簡単に騙され、そのまま走り去っていった。


「………ふ、ふふふっ」

「……簡単に行ってしまったな」

「きっとしゃがんでいたから気づかなかったのかもしれないですね」


 シーツを少しだけ捲り完全に立ち去った様子を見て二人で笑い合う。シーツの中ではカイル様が私を抱きしめるような形で収まっていた。


「助かった…。ありがとう、ティア」


 そっと頬にキスを落とされ、ビクッと肩が揺れる。なんという不意打ち。


「カカカカカイルさま…。いきなりはびっくりします」


「いきなりじゃなかったらいいの?」

「そ、それは…、あわわ………」

「ティア、顔真っ赤」

「カッカイルお兄さまのせいです!!!!」


 プシューッと湯気が出そうなくらい真っ赤になってしまった。うう、恥ずかしい。


「ふふ、そんな顔してたら歩けないね」

「もう、誰のせいだとっ」

「僕のせいだ。…ごめんね?」


悪びれることなくそう言うと、フワッとシーツを頭から被せられてしまった。


「でもほら、これで見えない」

「………あっ」


()()()()()()()()()。…ね?」



 もう一枚白い布を用意していたんだと言うなり、私達は二人共白いお化けに変身してしまった。


 小さなお化けと大きなお化け。その日のお祭りでは親子のようなお化けが仲良く手を繋いで歩いてる姿が見かけたられたとかなかったとか。






 




 ・実は最初からティアラの可愛い姿を周りに見せる気がなかったカイルなのでした。


 ・ハロウィンの起源はヨーロッパの『サウィン祭』とあったので、ちょっと現代寄りなハロウィンではありますがお話に取り入れて見ました。


・ちょっと同じような四コマを描いてみました。


挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)

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