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ティアラの魔法


ブクマ、いいね、評価ありがとうございます涙。


※お砂糖いっぱいな話です。




「カイル様」

「ん?なんだい?」


 学園のお昼休憩、バラ園のベンチにて。程よく空腹を満たし、少しばかり眠くなる時間だった。隣に腰掛けたティアラが何か言いたげにムズムズした表情をこちらに向けてきた。


「私、この前、草花を愛出る会のお姉様方に面白い技を教えてもらったんです」

「ふぅん。どういうの?」

「魔法なんですよ」

「魔法?」

「ふふ、そうなんです。とっておきの魔法です」


 ティアラは魔力が弱くて魔法を使うことはできない。これはきっと本当の魔法のことを言っているわけではないのだろう。


「へぇ…。とても気になるね」

「ふふふ、こうやるんですよ?両手をこう…円の形を作るんです」


 そういうなり両手の人差し指と親指をくっつけて円を作る。小柄な彼女の指は小さくて傷一つない綺麗な手だった。サンゴの様な淡い色の指先がとても愛らしい。


「それを少し形を変えて……はい、可愛いハートができました!」



パァァァァァァァァァァァァァァァ



 彼女の周りから花が舞う………かのような満面の笑みを向けられ思わず目を細めてしまった。



………純粋すぎて眩しい。



「ふ、ふふ。可愛いね」


 可愛すぎて口から本音が零れる。ただし、表情は変えずに。


「あれ?こうやったらすごい魔法になるって聞いたんですが…」


 反応が薄かったようだ。


 効き目がなかったと勘違いして、しょんぼりしているがそれすらもいじらしくクスっと笑いそうになる。


(ちゃんと効いてるよ。顔に出さなかっただけ)


「あ、そうでした。こういうのもあるんです」

「ふふ、他にもあるの?」


 あれで終わりではなかったらしい。なんて手強い魔法なんだろう。


ティアラは両手で作っていたハートを半分に離すとこちらにその手を近づけた。


「カイル様も」

「え………、こう?」


 自分もやってということか。


 ティアラのやろうとしていることがなんとなくわかり、内心くすぐったい気持ちだったが…。仕方がない。最後まで付き合うことにしよう。


 ティアラは嬉しそうにお互いの両手を合わせてハートを完成させようとした。


「………あっ」


 しかし思うようにはいかなかった。


 大きな大人の手と、子供の様な小さな手。それくらい自分たちには差があった。これではすっぽり覆ってしまう。どうする?自分の手をもう少し小さい半円にしようかと思ったが。


 ティアラは諦めない。


 小さな指を大きく開いて指先をこちらにくっつけてきた。


「ふふふ。できました」


 歪なそのハートをとても嬉しそうに眺めている。


 たぶん素でやっているのだろう。


 些細なことだが、ひたむきなその行動に俺の心は見事彼女の『魔法』で打ち砕かれてしまった。





『胸元で可愛く小首を傾げながらハートマークを作るのがコツらしいですわ』


『まぁ、まるで小悪魔の様ですわね』


『ふふふ、あざといですけど、どの殿方もこれでイチコロらしいんですの。わかってても引っかかってしまう怖い魔法なんですのよ?』


『なんて恐ろしい。でも、成功したらメロメロですわね』





 お姉様方から聞いた話はこうだった。けれど、カイル様は全然引っかからなかった。わかっててもメロメロになるって聞いたんだけどな。


(こんな見かけじゃやっぱり駄目なのかしら)


「カイル様、魔法………かかりました?」


 小首を傾げ自信なさげに尋ねてみる。


「カイル様…。どうして目を閉じてるんですか?」

「………………」

「カイル様?…もしかして効きましたか?」

「…………………ふふっ」


 カイル様はそのまま顔を隠してしまった。


「わぁ…!本当にかかったんですか!?」


 下から覗くように近づく。が、それがまずかった。


「カイルさ……まっ…―――――」


 その瞬間を待っていたかのように勢いよく抱きしめられてしまった。


「ふふっ……、はははっ。すごい魔法だね。いとも簡単に魅了させられてしまったよ」


 耳元で囁かれ、こちらも魅惑と混乱の魔法がかかったように動揺する。さっと手で耳を塞ごうとしたが、その手さえも掴まれてしまった。


「駄目だよ。させない」

「…………!!!!!!!カ、カイル様、なんだか雰囲気がぁ。目が座ってるような……っ!!!」

「ククッ、そうさせたのはティアラだけど?」

「え?そ、そんな。だって、これは………」


 魔法だけれど魔法じゃない。


「お遊びでもかかってしまう魔法というものがあるんだよ?」


 クスクス笑いながら頬にキスを落とされる。


「っっ………!」


 まさかこんなことになってしまうなんて。予想していなかった事態にたじろいでしまう。ああ、なんて魔法なのかしら。お姉様方に教えてもらった魔法は本当に恐ろしい魔法だと後々になってそう思い知らされた出来事でした。





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