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怪しげな視線

 その後、二人で冒険者ギルドに向かった。

 すでに時刻は夕刻になっていたが、ギルドはこの時間、盛況だ。

 当日の冒険で得た魔石を金に換える者、翌日のために情報収集や依頼掲示板を確認する者。


 多額の報酬を得た物は、そのまま酒宴に繰り出すが、一方で仲間を失った者が、うつろな表情で、新たな補充メンバーを探すことも日常茶飯事だ。


 そんな中、まだあまり顔が知られていないライナスが、魔法堂『白銀の翼』の看板娘とこのギルドを訪れたのだから、注目を浴びる。

 前にグリント達に会ったときとは違って、彼の装備は一新され、剣も鎧もカラエフモデル、しかも最新型だ。


「……なんか、この前よりも皆から見られている気がする……」


 ライナスが少し戸惑っていると、


「まあ、装備がカラエフさん作のものだからね……予算の関係もあって魔石を控えめの物にしてるけど、それ、本来なら+4以上のものを埋め込むこともできるよ」


「……そうなったら、どれぐらいの価値になる?」


「そうね……剣だけで、五千万ウェンぐらいになるかな?」


「なるほど……それを星一つの僕が装備してるんだ、目立ってしまってるんだね……」


 変に注目されていることを気にしていたが、隣にミクが居ることも要因、とまでは気づかないでいた。


 掲示板に掲載されている依頼の中で、討伐系で目を引く物があった。

 イフカの街から馬車で半日ほど離れたムアールという村近くの森で、最近トロールが頻繁に目撃されているという。

 その討伐依頼で、トロールの魔石を持ち帰れば、通常より高く買い取ってくれるらしい。

 魔石は鑑定によりその種族や大体の生息地域が分かるため、依頼と一致しているかどうか判別が可能となる。


 二人は、この依頼ならばダンジョンのように狭い空間に入る必要も無いため、ミクの中・遠距離攻撃が有効になると判断し、これに登録することにした。

 ミクは一応、冒険者登録は済ませていたが、まだ実績はなく星のないノーマル状態。

 そしてライナスは星一つ。

 その二人だけで、トロールというそこそこの強敵討伐を受けることに、ギルドの職員は最初難色を示したが、ライナスの装備の充実具合もあり、最終的には承認された。


 魔法堂『白銀の翼』のミクが、若い男と二人だけで冒険に出る。

 しかも、男の方は星一つの新人なのにクリューガ・カラエフモデルの装備を持っている。

 そのことに、事の成り行きを見つめていた何人かのハンター達が反応していたのだが、当の二人は特に意識していなかった。


 その日は、時間が遅くなってしまったので二人とも一旦それぞれ帰宅。 

 翌日、早朝から馬を一頭借りて、二人乗りで目的地のムアールの村へ向かうことにした。

 馬車を借りようとも考えていたのだが、ミクの体重と装備が軽いこと、そしてライナスの装備も見た目ほど重くないこともあり、また、冒険用の馬は大型で丈夫なので、そちらの方が速くて都合がいいということになったのだ。


 騎士を目指していたライナスは、もちろん乗馬の訓練もしている。

 また、元々伯爵家の令嬢であるミクもまた、乗馬は得意だ。

 しかし、ライナスは女性との二人乗りは初めてだ。

 鎧越しとはいえ、ミクに後ろから抱きつかれて乗馬するのは、やはり少し意識してしまうものだった。


 ムアールへ続く街道は、農業が主体のその村自体に向かう者が少ないため、比較的狭く、またやや荒れている。

 馬車だとかえって乗り心地が悪かったかもしれない、などと話をしながら、一時間ほど進んだ頃だった。

 周囲は所々に樹木が生えていて、今走っているのは二頭立ての馬車一台がなんとか通れるぐらいの林道だ。


「……ライ君、ちょっと止まって」


 ミクが、手綱を握るライナスに向かって後ろから警告した。


「うん? 疲れたのかい?」


 そう気遣いながら、ライナスは馬を止めた。


「ううん、そうじゃない……えっとライ君、今、『黒梟』はどのモードにしている?」


「モード? 一応、魔物がいないか警戒しているけど……」 


『アドバンスド・アウル・アイ +2』、通称『黒梟くろふくろう』は、魔石を視覚情報として、ある程度透過して見ることができるゴーグル型のアイテムだ。『魔物探知』と『加工品探知』、『両探知』の三種類のモードを切り分けることができる。

『加工品探知』にすると、自分やミクの魔石が強く見えてしまうので、それはオフにしていた。


「そうなんだ……じゃあ、『両探知』にしてみて」


 ライナスは、不思議に思いながらもその通りにしてみた。


「それで、前を向いてみて」


 その言葉に従ってみると、前方百メールほど先、林道の両脇に、それぞれ十個ずつほどの魔石が見えた。

 やや強い光の物も混じっている。

 少し動いているようにも見えた。


「……なんだ、あれ……樹木の陰に、誰か居るんだろうか?」


「そうね……誰かを待っている……ううん、多分、私たちを待ち伏せしているんじゃないかな……」

 ミクの言葉に、ライナスは目を見開いた。

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