新装備購入
ライナスがカラエフから直接買い付けたのは、ハーフプレートアーマー、ヘルメットとツーハンデッドソードの3点だった。
どれも軽く、丈夫で腐食にも強いがその分加工が難しく、値段も高い金属「タイタニウム」が用いられている。
フルプレートアーマーに比べて関節部分などの隙間が多いが、その代わりに軽さや動きやすさが優先されている。また、そういった部分でも鎖帷子状の強化が成されており、さらに全ての部分に魔導コンポによる魔力結界が展開される。
ヘルメットは目の部分以外は全て覆われるフルフェイス型で、口元は会話や呼吸がしやすいように細かな溝が開いている。また、これは開閉可能な仕組みだ。
当然、これも打撃を受けた際に魔力結界によるダメージ低減機能が付いている。
ツーハンデッドソードはこれまで同様、背中に背負うタイプで、素材の性質上これまでよりも軽いのだが、研ぎ澄まされたそれは別次元の切れ味を見せ、その上で耐久性が大幅に向上している。
さらに、勢いを付けて打ち付けた時に充魔石から魔力が瞬間的に発せられ、その衝撃を倍増させるため、切断できない強固な外装の敵であったとしても、その打撃力により大ダメージを当てることができる。
これら三点の購入金額は、ミクに事前に告げていた千三百万ウェン。全て使い切った形だ。
それでも、実際にこれらを店舗で買うと二千万ウェンを軽く超えるということなので、相当安く購入できたことになる。
新規購入装備:
メイン武器:ツーハンデッドソード +3 (クリューガ・カラエフモデル)
鎧:ハーフプレートアーマー +3 (クリューガ・カラエフモデル)
兜:フルフェイスヘルム +3 (クリューガ・カラエフモデル)
(従来からの装備)
補助武器:ダガーナイフ +1
補助魔道具:エコーイヤホン +1
(秘密の装備)
ブラックストレッチインナー+3(通称:黒蜥蜴)
アドバンスド・アウル・アイ +2(通称:黒梟)
アミュレット・オブ・ザ・シルバーデーヴィー
これらの武器・防具の購入により、ライナスはグリントパーティーの他メンバーと同等以上の装備を入手したことになる。
カラエフは、ライナスがこれだけの金額を持っていたことについて不審に思い尋ねたのだが、前回の冒険で巨大スライムを倒して、大量の古代の金貨等を見つけたことを告げると、
「ああ、例の噂になっていた件か……なるほど、期待の新人っていうのはお前のことだったか……」
と感心していた。
「言ったでしょ、ライ君は凄いって!」
なぜか自慢するミクに、カラエフは苦笑いだったが、機嫌は良さそうだった。
「カラエフさん、もしさっきの大剣を売ってもらうとしたら、どのぐらいの値段になりますか?」
ライナスが興味本位に聞いてみた。
「お前が引き抜いた、アレか? ……あれは、十億積まれたって売れねえ。かなりいわく付きのシロモノなんだ……繰り返すが、他言するんじゃねえぞ!」
厳しくそう言われると、それ以上質問することを諦めた。
そしてカラエフは、ミクに、
「例の武装の改良、上手くいっているのか?」
と尋ねた。
それに対して彼女は、
「うん、もうライ君の装備が整ったら、一緒に冒険に出て、実戦に使ってみようと思ってたところなの!」
そう声を弾ませた。
「そうか……もうできちまったのか……流石というか、呆れるというか……」
カラエフの表情からは、呆れの方が大きいように、ライナスは感じとった。
「……失礼ですが、お二人はどういう関係になるのですか?」
「俺とミクか? なあに、遠い親戚筋っていうだけだ。まあ、俺にとっては孫みたいなもんだな。あんなことさえ無ければ……いや、それを言っちゃ駄目だったな……しかし、メルはともかく、ミク、お前までわざわざ危険な事に手を出さずとも良いだろうに……」
「大丈夫。基本的に私は後ろから援護するだけだから!」
「……そうか……ライナス、お前が盾になって、ミクをしっかり守るんだぞ! ……いや、アレが完成しているなら、お前が守られる方になるかもしれねえが……」
「えっ……いえ、僕は全力で彼女を守るつもりでいます!」
ライナスにとって、カラエフの後半の言葉は気になったが、元々、騎士が女性を守るのは基本中の基本だ。
そういう意味では、ミクが遺跡探索などの冒険に出ること自体が危険なのだが、ライナスが付き添わなかったとしても、結局は彼女は他の誰か、下手をすれば自分一人でもハンターとして活動することは目に見えていた。
ならば、自分が付き添って、危険を少しでも減らし、いざというときは盾となってミクを守る……それはカラエフに言われるまでもなく意識していたことだった。
「……まあ、お前がそういうなら、俺は頑張れよ、としか言えねえが……まあ、身内以外で初めてメルが認めているんだ、あの剣のこともあるし、よっぽどなのだろう……それともう一つ。騎士をめざしているっていうお前なら分かっているとは思うが、ミクに変な気を起こすんじゃねえぞ!」
「はい、それももちろんです!」
カラエフが、凄みをきかせた脅しをかけたのに対して、ライナスは即答でそう返答した。
それに対して、ミクはライナスの陰で、苦笑いを浮かべていた。