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魔導コンポによる戦闘

「来るわっ……コルト、今よっ!」


「任せてくださいっ!」


 攻撃系魔導コンポーザーのコルトは、サーシャの呼びかけに短くそう答えると、柄に美しい装飾が施された短いロッドを振りかざす。


跳躍破裂炎兎弾バースト・ラビット!」


 その杖……「スタッフ・オブ・スイフタブルハイブリッド +3」から放たれた子ウサギほどの大きさの真っ赤な火炎球。


 それが本物の兎のように地面を跳ねながら、高速で通路を進み、ちょうど曲がり角からなだれ込んで来た大蜘蛛たちにぶつかり、そして破裂した。


 こちらまで伝わってくるほどの熱風。まともに受けた大蜘蛛たちはひとたまりも無くはじけ飛び、燃え上がる。


 しかしその奥から、さらに複数の蜘蛛達が怯むことなく次々と迫ってくる。


流魔粘着水ウ・ジャ!」


 続いて支援系魔導コンポーザーのサーシャが「スタッフ・オブ・アクアブルハイブリッド +3」を振る。

 そこから連続で放出された人の拳ほどの水弾が、次々と蜘蛛や、その手前の床に当たってはじけた。


 すると、その水に触れた蜘蛛達の動きが急に悪くなる……粘性の液体による鈍化だ。

 そこでまたコルトが杖を振る。


火炎障壁(リヴァー)!」


 通路を塞ぐほどの高さと幅、そして厚み1メールほどの程の炎の障壁が出現し、迫ってくる蜘蛛の群れを炙る。

 しかしそれでも、おそらく、恐怖や痛覚という概念のない魔物達は、それらを突破して接近してきた。


「よし……これだけ数を減らして、弱らせてくれりゃ十分だ。後は俺たちに任せろ!」


 リーダーのグリントが、その片手剣……「クリューガ・グラディウス +4」を鞘から抜いた。

 その刀身は0.8メールほどでそれほど長くはない。そのため、十分に敵を引きつける。


 そして大蜘蛛が飛びかかってきた瞬間、サッと一閃する。

 ほんの一瞬、剣が青く輝き……そして蜘蛛の体躯はスッと二つに分かれて落ちた。


 二匹目、三匹目も同様に、青い煌めきと共にあっけなく両断されていく。

 上位充魔石「エルガー」を埋め込まれた、二千万ウェン以上の価値があるその切れ味の前には、「タランチュリア」の堅い外装も紙切れ同然だった。


 戦斤使いのゲッペルは、もっと豪快だ。


 彼が両手で持つ「クリューガ・バトルアックス +3」を振るうと、やはり青い魔力付与光と共に、蜘蛛が二匹まとめて叩き切られた。


 その地面に当てた反動で斧を跳ね上げ、飛びかかってきたもう一匹を、今度は壁に叩きつける。

 あまりの衝撃に、丈夫なはずの石壁が少し欠けたが、青い光に守られた斧には刃こぼれ一つできない。


 ライナスの想像を遙かに超えたパーティーの戦闘力に、彼は一瞬、唖然となる。

 しかし後方からまた魔物の反応が現れたのを察知し、すぐに臨戦態勢に入った。


 今度は、さっきのものよりはやや魔石の力が弱いが、二体同時に迫ってきている。

 彼が持つ大剣は、威力も切れ味も、前の二人が持つものよりずっと劣る。

 また、腕そのものも彼らの方がはるかに上のように思われた。


 今まで、ライナスは剣の腕ではそう負けることはない、と考えてきたし、実際、最初のパーティーでは彼の能力は抜きん出ていた。


 しかし、前の迷宮でアイテムショップの美人店員に圧倒的な技術と力を見せつけられ、さらに今また、パーティーメンバーの豪快な戦闘を目の当たりにしてしまった。


 魔道具、そして魔導コンポーネント。

 それらを存分に使いこなす、中・上級のハンター達。


 ライナスは、この古代遺跡群攻略都市「イフカ」において、まだまだ駆け出しであることを痛感させられていた。


 彼が、アイテムショップの女主人、メルティーナ――その正体は、太古の最上級魔族「アルティメイト・シルバーデーヴィー」の魔石を埋め込まれた呪われし娘――と同格の潜在能力があることに気づくのは、まだ先の話だった。

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