寂しい横顔(2)
1063年2月下旬 マティルデ・ディ・カノッサ(18)からの秘密のお手紙(解読後)
私の白馬の王子様へ
暗号を解読してくれてよかった。
普段の手紙は、お義父様に検閲されています。そのためいつも思いを伝えられませんでした。しかし、ユーグ殿を使って、検閲をかいくぐることを思いつきました。
ただ、ユーグ殿もきっと羊皮紙の中身をのぞくと思ったのです。そこで以前教えてもらったカエサル暗号を使いました。
これで完璧よね☆彡
さて、ここからが本題。
あなたがどうして元気がなくなっちゃったのか、私にはわからないわ。でも、きっとそんな時もあると思うの。私も父が暗殺されて、兄姉が相次いで亡くなった時、絶望感に包まれたもの。それでも、私が立ち直ったように、ジャン=ステラ、あなたも立ち直るって信じてるからね。
私の肖像画は見てくれたかしら。綺麗って周りは褒めてくれたけど、私は寂しくて窓の外を眺めていたの。実はね、わたしも様々な闇を心に抱えて生きているのよ。ねえ、ジャン=ステラ。私の絵を見たあなたなら信じてくれるかしら。
それにね、うまく説明できないんだけど、私の憂いを振り払えるのは、あなただけ。
あなたの存在だけが、私の生きる希望なのよ。
だから、ジャン=ステラ。私のためにも早く元気になりなさい! あなたは私の白馬の王子様なんでしょう?
いい、よく聞いてね。立ち止まっている時間なんてないのよ。私と結婚できるタイムリミットはあと2年しかありません。2年後の8月までに迎えに来てね。
初めて会った時、あなたは「秘密は女を美しくする」って、言ってたでしょ?
だから、理由は聞いちゃダメよ。
でも、そうね。あなたが私を迎えに来てくれたら教えてあげる。
約束だからね。
きっとよ。
白馬の王子様の迎えを待っているお姫様より
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追伸:
前世で空を飛んでたんですって? イルデブラント様に天使認定されちゃっているわよ。
地上に堕ちてきた天使か、はたまた地獄まで堕ちる堕天使、つまり悪魔なのか。ジャン=ステラ、あなたはどちらなのでしょう。
私にとってはどちらでもいいわ。堕天使になってしまっても、私は絶対にあなたの味方よ。そうね。いっそ、地獄をあなたと私で支配しちゃう? きっとそれはそれで楽しいと思うわ。
そんな冗談はさておき、今後、なにが起きるかわからないのは確かよね。
もしもの場合、私のお城、カノッサ城まで来てください。私と結婚式を挙げちゃえば、お義父様はトスカーナ辺境伯ではなくなるわ。ただのゴットフリート3世になってしまうから、トスカーナ軍が私たちの味方よ。
マティルデお姉ちゃんの心の闇
ようやく第一部「新大陸」も終わりが見えてきました。
第一部を書き終えた後は、マティルデお姉ちゃんサイドのスピンオフ(10万字くらい)を企画しています。
どうしてマティルデお姉ちゃんは、ここまでジャン=ステラちゃんを贔屓するのでしょうか。
その秘密はスピンオフで明らかにしたいと思っています。
スピンオフに興味があるって方は、「いいね!」をお願いします。
追記:たくさんの「いいね!」をありがとうございます。通常話よりも2倍くらいの「いいね!」頂きました。
興味を持っていただけたようですので、第一部の後はマティルデお姉ちゃんサイドのお話を書こうと思います
※第二部は「神聖でありローマでもある帝国(仮題)」です。
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あとがき2
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カエサル暗号についてコラムを書きました。しかし話がカエサルの不倫相手=クレオパトラにまで及んだため、別立てにしました。
「カエサル暗号と痴女で寝取りなクレオパトラさん」
https://ncode.syosetu.com/n9644ie/
うさぎのナナちゃんと、黒猫のマティちゃんの掛け合いです。
よろしければご覧ください。