007.孤児院リフォーム 2
あのあと、一通り傷んでいる場所や不安な場所などを聞き終わった俺は、そこを中心に建物の中を調べて回っていた。しっかりと許可をもらって男子部屋と女子部屋も立ち入ってどこがどう傷んでるかを調べ上げる。ふと外を見てみれば庭で年中組と思しき孤児たちが遊んでいる。彼らもまた、ここの孤児たちなのだろう。
「やはりだが、床が特に傷んでるような感じだな」
この孤児院はほとんどが木製で作られている。そのため孤児が走ったり思いものを運ぶときに使うカートのようなものが通るたびに床にダメージを与えていたのだろう。このままにしていると最悪床が抜けて下の階に落っこちてしまう可能性があるので特に危険だ。なんせ子供というものは無邪気で元気いっぱいだからそんな建物の耐久性なんてわからないだろう。
廊下の次は調理場と食堂だ。築30年ほどでそこから調理器具は変わってないため、だいぶ古い形式のものになってしまっている。エレンのところほどではないものの、魔石もかなり傷んでいる。後で聞いたらもう8年は使ってるという。じゃあ変え時だろう。食堂の椅子と机もまあまあ傷んでいた。まあ足組だけ直せばまだまだ使えるレベルだが。
「ん……? ここの窓割れかけてんじゃねーか」
食堂付近の窓を見てみると、斜めに線が入った窓を発見。明らかに割れかけてるからこれは交換。その他窓枠だけでも5個くらい傷んだところが見つかった。
お次は孤児たちが寝る部屋。全部で8部屋あるところの立ち入りをすべて許可されたので入って調べていく。おおかた予想はしてたが、ちびっ子の部屋になればなるほどモノの扱い方が荒い。年少組の部屋なんておもちゃ類がボロボロだし、2段ベッドの支柱も怪しい。いったい何年前から使ってたんだか。まあ喧嘩なんてしょっちゅう起こるから何かしらボロボロになってると思ったら案の定だった。
結論を出すと、かなり持ってくることが多いし、一人だと死ぬほど面倒くさいということだ。
これはちょっと考える必要がありそうだ。
〇 〇 〇
翌日。俺はセレスを連れて王都の北にあるギルド直営の資材市にやってきた。王国南側にある市場とは違い、こちらは木材や鉄、貴金属から家具などを売っているところだ。魔石みたいな高価な素材はギルドに直接行かないとないが、それ以外は好きなものが揃う鍛冶屋の台所だ。結局あれだけの修繕箇所が見つかったからにはここで買って、直接孤児院に配送してもらうしかない。問題は人手が足りないということだが……それは後で考えよう。
「スミス様、これはいかがでしょう」
「んー、ちと細くないか?」
最初にやってきたのは木材のコーナー。まずは2段ベッドの支柱と食堂の椅子とテーブルの足の部分のモノを見繕いに来た。渡された金額もそうだし、選民主義のとはいえ経費で落として最終的には貴族の金で買うんだから、いいものをチョイスしても何も文句は言われないはずだ、
「もうちょっと耐久性がなぁ」
「お、あんた耐久性がいい木材探してるんかい」
「ああ。なんせ子供たちが使うもんだから、なるべく安全で耐久性がいいのが欲しいんだわ」
「そういうことならこれなんかどうだい。東洋のどっかの国から仕入れた”シラカバ”っていう木材だ」
とあるブースを見てた時に話しかけてきたアフロもじゃもじゃのおっさんが、ある一つの木材を持ってきた。そのシラカバというキは見た感じかなり綺麗な木材だと思ったが……断面を見ても年輪がしっかりしている。木材は年輪がしっかりしているほど耐久性がいいといわれているから、かなりいいはずだ。
「おっちゃん、これいくら」
「そうだな、この一本で7500リウムってとこか」
「まあまあいい値段するが……耐久性考えるとそれがベストだな。よし、それ3本くれ。あとそれの板材ある?」
「あるぞ。サイズは80×120と160×120だ」
「ん、じゃあ160の方20枚」
ちょうどよかった。傷んでる床と変える板材を探していたが、そこにちょうどいいサイズの板材を買えることができた。これはラッキー。ちょっと値段は張るが別に俺が買うものじゃないし、大丈夫大丈夫。余ったら持ち帰ってこっとで使うし。
よし、次行こう。
〇 〇 〇
それから3時間以上かけて、市場を回って必要な素材を買っておいた。すべて領収書をもらったが、その量から考えるとこれから約2日間の間は孤児院に嫌がらせレベルの量のモノが届けられるはずだ。シスターや神父には悪いが全部あれはリフォームに必要なものだから我慢してほしい。こっちとしても久しぶりにいいものを爆買い(かつ人の金で買えた)からかなり気持ちよかった。
最終的に、何かを買いに来た人をターゲットにした食べ物の屋台の誘惑に負けて羊肉の串焼きを食べながら店に帰りながら、リフォームの工程を考えたのだが……どうしても人手が足りない。そこが問題だ。
「なあセレス、リフォームする日ってほかにやることあったか?」
「いえ、その日は特に私はやることありません。隙を見てエレンさんのところを手伝いに行こうかと。最近落ち着いてきたとはいえ忙しそうですから」
「なるほど……」
じゃあエレンには悪いがセレスを連れて行くのは確定。それ以外にもアテはいるがあの人も忙しそうだしなぁ。どうしたものか。
「……スミス様」
「ん、どした?」
「そういえば今日の夜ご飯の材料何もないのですが……」
「あ、やっちった」
実は今朝今日市場で何か食材を買ってきたいとセレスが言ってたのだが……仕事優先で資材市に先に行ってそれから王都市場に行く予定だったのを、資材市で疲れ果て、そのまま二人とも市場に行くことを忘れて家に帰ってきてしまったのだ。
「どういたしましょう」
「う~ん……もう市場には何も残ってないし、最近夜の市場周辺はヤンキーの巣窟って聞いたからなぁ」
「すいませんが、外食でもいいでしょうか」
「ああ。落ち着いた時間帯になったらエレンのとこ行くか」
そんな会話をした後はお互い適当に時間を潰し、ラストオーダーギリギリでエレンがやっている大衆食堂”ノルン”に二人して突撃。幸いにも火曜日のラストオーダー前ということでだいぶ空いていた。
「珍しいわね、二人ともこの時間に来るなんて」
「ああ、市場に行く予定だったんだが、お互い疲れ果ててそのこと忘れてな」
「あー、なるほど。セレスちゃん、注文何にする? ジョンはどうせスパゲッティーでしょ?」
「それでは、豚肉のワインソース煮定食を」
俺、まだ注文してないんだけどなぁ……まあどっちみちスパゲッティーにしようと思ってたからなんも言わんけども。
そして、俺たち以外の最後の客が出ていき、店は俺たちだけに。さらにそこから最近仕事はどうかという話題になり、今日は孤児院のリフォームのための資材を買ってきた話をすることに。
「へぇ、そうだったのねぇ」
「まあ、ぶっちゃけ人が足りなくてなぁ……誰かいい人いないか探してるとこさ」
「なら私が行ってもいいわよ。あそこは自分の実家と同じだし」
店はどうするのかと聞けば臨時で閉店にすれば問題ないと極論を言ってきた。最初は遠慮したものの、話せば話すほどぐいぐい来て、最終的に「この前コンロと窯緊急で直してくれたお礼」とまで言ってきたので、最終的には半ば強引に同行してもらうことに。
戦力にはなるかわからないが、これでなんとかなりそうである。