013.食欲魔人と調理器具 4
アレスとエレン、そしてセレスと楽しく(?)昼食をとったあと、俺は彼らと別れてギルドを訪れていた。ギルドから依頼された品が完成したから、それを持っていくついでに岩塩を入手しにきたのだ。実はこの地域で岩塩を手に入れることは難しく、それこそだいぶ離れた南の小国から輸入するしかないのだ。別に王国産のもあるにはあるが、そっちは脆くて言って安価な粗悪品だ。それに比べたら輸入の岩塩は高価な代わりに塩の含有量も高くて丈夫だ。だから今回は輸入物を使う。
「なあ、ちょっといい?」
「はぁ、なんで……って!? ああああはいなんでございますでしょうか!?」
適当に商業部の窓口をあたってみたら、今日の係員はいつだか魔石の件でお世話になった人だった。どうやらあれがトラウマになっているらしく俺を見るなり怯えて後ずさりながらも要件を聞いてきた。っていうか敬語めちゃくちゃだな。
「ここのギルドからの依頼で作ってたやつ完成したんだけど。どこおけばいい?」
「は、はははははい! そこに立てかけていただければ! すぐに係員が取りにまいりますのでぇ!」
「ん、あと輸入もんの岩塩って在庫ある?」
「はいはいはい!! 今すぐ見て最高の品を撮ってまいるでござりまする!!」
……なんて?
〇 〇 〇
それから数日間、数キロ単位で高級輸入産岩塩に向かいとうとう2つの調理器具が完成した。関係ないけどもう1つ面白いものも作ることができた。それをアレスに伝えると、その日のうちに今度それを使った試食会パーティー(?)をするらしいからお前もこいと言われてしまった。確かに作ったのは俺だし、何かあったらすぐに対応できるために居なければいけないのはほぼほぼ確定なわけだが……めんどくせぇ。何が楽しくて礼服着てお貴族様とおしゃべりしながら飯をくわにゃならんのだ。
だが、もちろん俺に拒否権なんてあるはずがない。作った張本人がいなくては話にならないんだろう。だからしょうがない、行くしかないのだ。
そして当日。嫌々ながら着なれない礼服を身に纏い、自宅からクソほど遠いカロリー子爵邸まで足を運んだ。ついでだから巻き込もうと思い、エレンを調理実演役に呼びセレスもアシスタントとして参加させた。やっぱこういうのは一緒に楽しまないとな、はっはっは。