石英の墨【詩】
つららの先端からしたたる水を
金剛のすずりにあつめ
石英をすってできた墨で
したためた言葉は
透明で
あまりにも純粋すぎるから
ひとに伝わらないのだそうだ
けれどもそこに紫外線をあてると
ぼうっと文字が浮かびあがるらしい
かつてのきみがくれた手紙は
きっとそういうたぐいのもので
それなりに年をかさね
紫外線ライトを得たいま
やっと文字が見えるようになった
あのころぼくに向けてくれた
青みがかったようなまなこが
たとえ黄ばんでいたとしても
きみが健在でいてくれたらと
切に願う冬の日
2021年11月23日制作。