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#002.依頼

リースキット王国から南下すること2週間。俺……大川心斗(おおかわしんと)の目の前に広がるのは巨大な城壁だった。少し灰色がかった立派な壁は外部からの一切をシャットアウトしている無機質なものに感じる。が、ここの中からこの大陸に技術や文化が流れて言っているというのだから驚きだ。

こんなん、あのまま学生生活をやっていたらまず見ることはなかっただろう。


……俺は今から約4年前にこの世界に転移した人間だ。地球という惑星の、日本という一切の戦争をしない平和ボケしまくって技術だけが発展した国の高校1年生だった。しかし、部活中に突如足元に出現した魔法陣のおかげで見事にこの世界に飛ばされ、チート能力を一緒に転移した後輩2名にとられ、今は【チェンジマテリアル】……所謂”物質変換魔法”を駆使して一つの国から依頼がやってくるほど名の通った冒険者になったわけだ。


そんな俺が転移した国の”リースキット王国”を離れ、南の台地……”サウスフィル―ルド共和国”に来たかというと、やはり国からの依頼だった。もっとも、依頼を出したのは国で、俺の元まで運んできた自称王国情報部のくノ一は謎の魔法により俺の前から姿を消したのだが。


「……シュベルツィアよりでかいですね、これ」

「ここら辺の魔物も全部でかいらしいぞ」


俺と同じように馬車から降りて目の前に広がる城壁を見つめるのは新田明里(にったあかり)赤坂唯一あかさかゆういちといい、地球時代の学校の後輩であり現在は俺とパーティーを組む冒険者だ。

新田は魔導士、赤坂は騎士を職業としていて、その適性は所属ギルド曰く天才的とのこと、こいつらに適性は全部ぶんどられたんじゃないかと思ってる。


今は別行動をとっている仲間を含め、今回リース機っと王国から共和国(こっち)に派遣されたのは全部で7名だ。


今回の目的はここ、共和国にある学研都市”ルーツ”の中でどんどん勢力を拡大する新興宗教団体を根絶やしにすることだ。その宗教の法典には国は現在の共和国の南端から王国を通り、リースキット王国の北に広がるノースフィールド帝国の一部となっており、その危険な思想に危機感を覚えた各国は早急にこれを殲滅しようとした。しかし、彼らは最近王国と戦争になって消滅したグランツ公国と水面下で繋がりがあったこと等から不用意に刺激ができなかった。


そこで、王国の中で一番と評判の俺たちがこの学研都市に潜入して殲滅の手伝いをしてほしい、ということらしい。なお俺たちは潜入ミッションなどは一切やったことがないし、地球時代も日の目を浴びることが少ないPC部所属の陰キャだった。はっきり言って不安でしかない。


「それで、やっと着いたわけですが……ここからどうするんですか?」

「ああ。俺たちの建前上は共和国への留学生だ。今日からはここにある大陸最大の教育機関である”フロンティア魔法学園”に入学しながらカルト宗教を根絶やしにするって感じだ」


まあ魔法学園と名乗ってはいるが騎士科もある総合学園だ。毎年入学者は各科合わせて400人に対し毎年受験者は1万人を超すというのだからどれだけ狭き門なのかがわかるだろう。受けるにも何らかの推薦状が必須とか言われてる。


「つまり、その世界のエリートの卵がわんさかいるところで勉強しながらこっそりその宗教を探して倒してくれ、と」

「そういうことだ」


不安そうに聞いてきた赤坂の言葉に「ザッツライト」と答えてやるとそんなん無理に決まってますよと自信なさげに肩を落としながら荷車に戻っていった。こいつ、最近結構強くなったのに未だにネガティブ思考だけは健在だな。


「だってですよ、俺たち地球時代でも陰キャだったじゃないスか。今はギルド内2位の実力の【エリート】なんかやってますけど、コミュ力は専門外ですよ。ハブられて目ぇつけられて虐められて終わりですよ」

「いやネガティブすぎんだろ」

「で、実際どうなんです? 一応私たちはあの岩流さえも倒した冒険者なわけですが、ここの生徒たちとの実力差は」

「お前はお前でポジティブで好戦的すぎんだろ」


聞いた話によると、一般生徒くらいなら軽く一蹴できるとか。一応冒険者は3年以上続けてるから実戦経験込みで言ったら俺でも十分に戦えるはずだ。

と言ってやっても赤坂は「俺にはあの城壁は光りすぎて何も見えないので」と荷車の中に引きこもってしまった。まあいい。とりあえず検問所通って魔法学園の前でこいつは引きずり落とせばいい。


そう決め込んだ俺は休憩させていた馬たちにもうひと踏ん張りしてもらうため馬車に戻って検問所までの歩を進める。


実質4年ぶりの学園性格が待っていることは、俺たちにとって楽しみで……それと同時に不安なことだった。


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