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#001.歯車は動き出す。
……記憶が、流れ込んでくる。
感じたことがあるようで、ないような感覚。
何も意識してないのに勝手に流れ込んでくる。
落ちていく、何色ともとれない穴の中を。
落ちていく、光の穴が小さくなるのを見ながら。
落ちていく、片手を伸ばしながら。
落ちていく、何が起きたかすらわからない”無”の中で。
落ちていく、徐々に浮かび上がる絶望とともに。
落ちていく、温かいあの場所から。
落ちていく、そこに何があるかわからないまま。
落ちていく、かすかな意識を保ったままで。
落ちていく、浮遊する感覚以外がない身体とともに。
落ちていく、再びあの場所に戻りたいと思いながら……。
そして、次に聞こえたのは――
「この子は、遣わされた使徒なのかもしれん」
という一言だった。