さがしもの
大事なカギを落としてしまった。
それは、初雪が降る少し前のことだった。
そのカギは、パパからのプレゼントを開けるために必要なものなのに。
宝箱が好きな僕のために、パパは毎回、プレゼントを宝箱に入れて僕にくれる。
外は吹雪き始めて、出掛けることが出来なくなった。
楽しみを取っておこうと思い、プレゼン卜はすぐ開けず、カギをポケットにずっと入れていた。
そして、ポケットに入れたまま、走り回ってしまった。
それがいけなかった。
雪はどんどん降り積もってゆく。
このままでは、いつまで経ってもカギは見つからないだろう。
僕の頭が埋もれてしまう高さくらいまで、雪は積もっていた。
カギはその雪の下にあるから、掘っても見つからないだろう。
場所の検討もつかないから、今はもう諦めるしかない。
そんなとき、パパが突然倒れた。
ずっとずっとベッドで目を瞑っている。
もう起きないかもしれないと言われた。
毎日病院に来て、パパの手を握りしめ続けた。
段々と積もっていった雪も、春に近づき、次第に溶けていった。
まだ、パパのまぶたも手も動かない。
雪は完全に溶けていき、降り積もっていた頭の中の雪のようなものも、完全に溶けていった。
そして、埋もれていた、雪の下にカギがあるという記憶も溢れ出てきた。
すぐに町中をあちこち探し回った。
パパと一緒によく歩いた馴染みの道を、日がくれるまでずっとずっと探した。
パパにもカギがハマるような穴があったらいいのに。
だって、カギを差し込んで回したらパッと目覚めるかもしれないから。
そんなことを考えていると、見覚えのあるカギが落ちていた。
空き地の砂利の上。
拾って家に走って持ち帰った。
そして、宝箱のカギ穴に差し込んで、ゆっくりと回してみた。
すると宝箱は開き、中にはずっと欲しかったゲーム機が入っていた。
そして、その横には、父よりと書かれた手紙が入っていた。
「今度一緒にやろうな!雄太!」
それを見て、心が雪のように溶けそうだった。