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業界初の景品生活(仮)

私は腰にエプロンを巻く。

今日はなんにもスケジュールが入ってないから、久々にちゃんとした料理を作ってみるのだ。

卵を落としてかき混ぜて…。ほぉら、柔らかい玉子焼きになった。


「さて、」

と私は口にポッキーを咥える。

元々痩せ型じゃないから糖質は気にしていないわけじゃないが、仕事もひと段落ついてきたしとちょっと気を抜いているところもあったりするのだ。

ちなみにこれ()(ポッキーは商店街の)景品。


私はどうにも当たりくじが強いらしい。幼少期より、それは至って地味なところで発揮されてきた。しかしここ数年、芸能界に入ってから受けたオファーもざっくり平均の視聴率は取れるという、ありがたい当たり気質。

しかも芸能人として食っていけるようになってから、貰い物は多いし、番組の景品も8回に7回当たる。結構割高なモノまでもらえたりするので、非売品でなければメルカリに出したりもする。

(今日もネット漁り。買わないけど…)

ともかくそういうわけで、たまたま当たった私のギャラで一括でたまたま見つけた安いを買ったのがデビュー5年目。そこからもともと持っていた一軒家を家具付きで賃貸に出し、新しく都心に3LDKのモデルマンションを買った。そこから始める景品生活、というわけだ。


「あっやば!お米炊くの忘れてた!」


私、(あ、名乗り忘れてたけど安藤ミキは)洗面器の下を漁って、これまた実家の商店街のお米を取り出す。


「うーん」

私はまだフライパンの中で湯気を立たせている玉子焼きを見て、思い悩む。

(冷めちゃうよな…食べちゃう?いやいや。あっためれば…でもそれじゃあ半熟が…)

ずばり、どうする?

こういう時は食べてしまうのが得策だ。お米があったほうがいいのは当たり前だが、なかったって美味しいのが自家製料理というモノ。自分で作ったって美味しいに決まって…

「あ!」


安藤ミキは閃いた!

(…謎のフルネーム…)と自分でツッコんでみたりする。

(大丈夫、私の一人芝居が意味わからないのはいつものことだ)


「お隣さん行こう!」


【第二話】


『ご飯が炊けないので、一緒に食べよう。』


そう。たったこの一言じゃないか!頑張ろう、ミキ!試合は始まってもいない!


「ご!」

「ミキ…なにやってんの?」


一人でにドアが開いた。


「インターホン押す前から扉に体当たりするやつなんてミキしかいないでしょ」

「そ、そうだよね?」


なぜ納得する、と弟コウジは思った。まあ二階で聞き耳立ててるだけだけど。あ、そういえばなんでミキさんは近場の近隣住民ではなく、エレベーター降りての我が家(一軒家)に来るんだろ。いつか聞く時あったら、聞いてみよ。

だが聞くときも何も、手軽に、すぐそこにいたりする。しかも聞く時なんて一生こないと思われる。


「で?」

「ご飯、ないんだ」

「そっ。それで?」

「一緒に食べよう?」

「あのさ、ミキ」


お隣さんこと、短パン美人の中島レナはため息混じりに言った。


「今、10時だよ?」

「うんそうだね」

「中途半端すぎる時間なんだよっ!」

「まぁ…うん…」

「わかってないやつだよな、お前?」

「まぁ…うん…」

「………。まあいいや。コウジィーー!ミキ来てるよー!食べるー?」

「……食べな…」

「玉子焼き、だし巻きぃ!」

「食べる!食べるよ、ねーちゃん」

「あいよー」


じゃあ三等分だね、とレナは切り分ける。

大きな大きな厚焼きの玉子焼きが切り分けられた。



【これまでのあらすじ】

私の景品生活は始まったばかりだ。

なんと、衝撃の3日と6時間!引越しの荷ほどきも終わっていない。

景品はお金だったり、ものだったり、米だったり、色々する。

そして私はそれで食っているのだ。あとギャラ。

業界人としてメジャーじゃない私は、そうやって一応暮らしていっているのだ。

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