胡椒の挽き語り
路上ミュージシャンが山程いる。
地元は田舎で、見る機会が少なかったので嬉しい。
さすが、路上ミュージシャンが有名な街だけあって、みんな上手だ。
ギターを弾きながら歌う者。
ピアノを弾きながら歌う者。
アコーディオンを弾きながら歌う者など、様々な弾き語りが存在した。
その中に、独特な刺激を放つ、弾き語りの男性がいた。
その男性はコショウのミルを両手で、一生懸命動かしながら歌っていた。
軽快な音を鳴らし、粉になったコショウが路上に降り積もってゆく。
一曲が歌い終わり、男性の前にいる人だかりが盛り上がる。
その人だかりの中の一人が、男性に疑問を投げ掛けた。
「何でペッパーミルなんですか?」
「使っていた楽器が故障したんです」
故障したからコショウを使う。
そんなダジャレのようなものに苦笑が漏れた。
どこで歌っても苦情が出ないくらい、コショウと男性の声はマッチしていた。
ポテトサラダとコショウの組み合わせ以上に。