8話
優月視点
部屋での準備が終わり、闘技場へ向かう。
装備はいつもの服に刀、そしてアイテムボックスから取り出した黒の指貫グローブと黒のブーツを新しく装着しており、どちらも迷宮で発見した超高性能品だ。(服も同様かそれ以上のものである。)
闘技場に着くと、既に西条さんたちとロイさん、そして、知らない人たちがおり、オックスさんも準備が整っている様子であった。
「すみません、お待たせしました。」
僕はそう言って西条さんたちのほうへ近ずいて行く。
「いいえ、大丈夫よ。そんなに待ってはないわ。それより準備は万端? 」
「ええ、しっかりと準備は出来ました。昨日は久し振りに早くに寝れましたから。」
「そう、それは良かったわ。さて、オックスと戦ってもらう前に、紹介しておくわ。
こちらの女性がここの支部長の安藤 玲子さんよ。」
そこにいた女性はまさにできる女社長と言うような人であった。
「初めまして。今ご紹介に預かった安藤です。今日は良い戦いを期待しています。」
「初めまして。知っているとは思いますが、十六夜 優月です。貴女のご期待に添えるように頑張ります。」
「さて、もう一人紹介するわ。
『賢者』の1人である、古舘 源宗よ。彼も世間に明かしている『蒼葉』のメンバーで、みんな"翁"と呼んでいるわ。」
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『賢者』
賢者とは世界に突如として出現した迷宮や凶魔等の不可思議なことについて、その分野で最も詳しい者のことを指す。
分野は7つあり、それぞれに賢者がいるため、まとめて、"七賢者"と呼ばれている。
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「初めまして、儂が日本の賢者じゃ。分野は魔力じゃ。よろしゅうのう。」
「初めまして。賢者に会えるとは感激です。機会があれば是非お話しを伺わせてください。」
「それじゃあ、紹介も終わったことだし、さっそく始めましょうか。
オックス!準備はいいわね?」
「問題ない。いつでもいいぞ。」
「わかったわ。貴方もいいわね?」
「ええ、いつでも大丈夫ですよ。」
「よし。それじゃあ舞台の上に上がって。」
僕とオックスさんは舞台に上がり、所定の位置につく。
すると安藤さんが審判台に立つ。
「それでは、私、安藤が審判をします。
では、ルールを説明します。
1. 武器はなんでも使って良いです。この舞台には迷宮から、発見された"魔術具"が使用されています。
銘を"非殺結界"。
その名の通り結界内では死なないというものです。死に至るダメージを受けると強制的に結界から弾き出されます。結界から出ると受けた傷は全て無くなります。ただし、死なない代わりに魔力を持ってかれるので気をつけてください。
2. 決着はどちらかが降参、又は、結界から弾き出されるかです。
3. 不正行為が見つかった場合は即刻終了とし、不正行為をした方の負けと致します。
以上がルールとなります。
それでは始めましょう。両者の健闘を祈ります。準備は良いでしょうか?」
「「はい。(ああ)」」
「それでは、 始め!」
その言葉と同時に僕は腰に差している刀を地面に置く。
「バカにしているのか?」
「いえいえ、別にいらないと判断したまでです。なので、決してバカにしているというわけでは。」
「ッ!そうか。ならばその判断、後で後悔しろ!」
オックスさんはそう言ったと同時に大剣を構えて走ってくる。僕も拳を構えてそれに応戦する。パッシブスキルにより魔力をコントロールして身体能力と拳の強度を強化する。
ただし、全力の2割程ではあるが。
オックスさんも既に魔力による強化を行っており、大剣を軽々と扱い切りかかってくる。僕はそれを全て見切り紙一重のところで回避し続ける。
それが暫く続いたのち、オックスさんが一度引く。
「なぜ攻撃してこない?攻撃することはできた筈だ。」
「本気が見たいからですよ。使ってくださいよスキル。そしたら、僕も攻撃しますから。これ試験も兼ねているので、評価が高い方がランクも高くなるんでしょうしね。だから全力を出し尽くした貴方と戦い、勝ちたいんです。そうすればAランクは行けそうですし。
さぁ、貴方の固有スキル"鬼人化"を使って僕を倒しに来てください。」
「分かった。ならば、俺も本気でいくとしよう。
ハァッ!」
スキル発動 "鬼人化"
発動と同時にオックスさんの体が変化する。
筋肉は肥大し、肌は紅く染まっていく。そして、額からは、一本の太い角が生えてくる。
その姿はまさに伝承にある鬼であった。
変化が終わると、先程までとは別格のプレッシャーを感じる。
「さぁ、いくぞ!」
そして戦いは第2ラウンドへと突入していく。