2話
???視点
みんなの方へ歩いていくと、みんなは僕と分かっているのか声を大きくする。
その声はたくさんあったが、1つにまとまり始めた。
それはさながら、僕に乞うているような、そんな声だった。もし喋れたのなら、彼らはこういうだろう、
"早く私(僕)(俺)たちを殺して!"
と。
僕はいつも通りに自分のスキルを発動させた。
いつものように手を手刀の形にし、何の乱れもなく発動したスキルによって
僕の手刀を魔力が包み、鋭利な刃物のような切れ味が付与される。
スキル "魔力支配"
魔力に関する総合スキルであり、
このスキルによって自分の魔力を手に纏わせることにより、先程のような効果を発揮する。
まぁ、他にもたくさんの効果があるのだが、それは今後説明しよう。
僕はスキルを発動させたまま、みんなの元へ表情も変えず、ただただ無表情にゆっくりと歩いていく。
*********
それはさながら、死神が死という救いを求める
哀れなモノたちの元へ救いを与えるような光景であった。
今まで口論していた、剣聖と女性も、その仲間達までこの光景に目を奪われていた。
それほどまでにどこか神秘的な光景であった。
*********
静かになった空間で僕は最も手前にいたモノたちの元へたどり着いた。そして彼らに
「何か言い残すことはある?」
と聞く。
これはあくまでも儀式的なものであり、返答を期待してのものでは一切ない。それでも、これもみんなとの約束だからと思い、行う。
「…………」
案の定何の応えも返ってはこない。
僕はこれで儀式は終了だと、スキルを発動させた手で心臓目掛けて刺突をする。
手は何の抵抗もなく、体を貫通した。そして呆気なくその生を終わりへと導いた。
そうして淡々と作業のように、しかし、とても丁寧に一人一人殺してゆく。
一体どのくらいの時間が経ったのだろうか。
体感ではもう数時間経った感覚である。
もう残っているのは最年長の子たち4人だけであり、彼らは僕との付き合いも長く、この"約束"をした子たちである。
*********
彼らと僕はそれぞれ実験が違ったが、僕が一番年下ということで、可愛がってくれ、よく会って話した。その頃、僕は荒れていたが、彼らはそれでも一緒にいようとしてくれていた。よく、何でそんなに構うのか聞いたが、いつも
「お前は優しいし、いい奴だから」
と言って、笑っていた。
本格的に実験の始まる日の前日、彼らの中のリーダー格の男の子が突然、
「約束しようぜ!」
と言い出した。
(いや何を?)
彼曰く、それは、前から考えていたことらしい。
彼は子どもながらに実験の悲惨さを十分なくらい理解していたのだ。
「いや、俺たちさ、明日から実験の本番が始まるじゃん! そしたらさ、多分もうほとんど会えなくなると思う。だから、"約束"だよ!
実験で最後までちゃんと生き残ってた奴が、失敗しちゃった奴のことを責任持って殺してやるんだよ。
やることは単純、
1、自分が使える攻撃手段として最も確実にかつ痛みがないように即死できるような方法で殺すこと。
2、殺す前には必ず儀式として、"何か言い残すことがあるか" 聞くこと。ただし、返答は貰わなくてもいい。
たったのこれだけだ! な、単純だろ。後、また後から来て実験をする奴らにもこれは適応されるからな!忘れんなよ!」
これが"約束"の全貌である。
彼は当時15歳であり、僕を除くと、一番長く正気を保っていられた人であった。
*********
そんなわけで、僕は約束を果たすため、こうして儀式を行い、総合スキルまで使って殺しているのだ。
だが、それももう残すところあと5人だけだ。
彼らは僕と直接約束を交わした人たちであり、勿論その中には彼もいる。
僕はここでスキルを止める。そして僕は、新たにスキルを発動させる。
固有スキル発動
スキルにより僕の手刀に黒いナニカが纏う。
そして僕は儀式を行い、彼らをスキルによって殺す。
そうして、全員を殺し終えると、剣聖さん達の方に向き直り
「終わりました。」
と、一言言う。
それを受けて、剣聖さん達は はっ として
「あ、あぁお疲れ様。」
と言ってきた。
(何がおつかれなんだろ?)
と思いながらも、
「いえいえ、これくらい。なんてことないですよ。
これで"約束"は終わりました。貴方達はまた他にも任務とか残ってますか?」
と聞く。
「ああ、あとは研究資料や情報の回収と他にも武器とかをな。」
そう言って今度は資料を探し始めた。