12話
優月視点
僕が刀を構えると同時にスケルトンが百体以上も創造される。
‘我が僕たちよ、我を守れ。’
その命令に従いスケルトンたちは王の周りに陣形を組んで王を守る。
僕はその時間稼ぎをさせまいと魔術銃を抜き、魔力弾を連射する。しかし、倒しても倒しても創造されるため一向に数が減らない。むしろ増えていっているようだ。
(数が多過ぎる。このままだと手数が足りなくて、押し切られるかな。範囲攻撃で一掃していくか、一点突破で王を倒すかだな。どっちにしてもその時間が作れるか。手を止めた瞬間にスケルトンの群れに呑まれそうだ。
仕方ない、こちらも時間稼ぎといこう。)
僕は思考を止め、刀を納刀して魔術銃をもう一丁抜く。しかし、そちらの手は使わずに片手のみで応戦する。
そのまま数分が経過する。相変わらずスケルトンは減らず、そればかりか段々と上位種が増えていく。特にアーチャーが厄介で矢に対していちいち魔力を消費して、魔障壁を張らなければいけない。
魔障壁 : 魔力で構成された透明な壁。強度は使用者の魔力量等に左右される。
さらに増えるスケルトンに対して、僕の対応は少しずつ間に合わなくなってきている。
(だが、数分は稼ぐことができた。これだけ貯めれば充分だろう)
ここで僕は遂に先程から一度も使用していなかった魔術銃を構える。そして、膨大な魔力が込められたその魔術銃の引き金を引き、魔力弾を王のいる場所目掛けて発射する。
凄まじい威力を発揮した魔力弾はスケルトンを吹き飛ばしながら衰えることなく王のいる場所まで飛んでいく。
‘なにっ!?’
これには王も驚いたようでいつのまにか創造していたフォートレスを何体も盾にして身を守る。魔力弾はフォートレスを全て倒し、王の手前で消え去る。
何故これほどの威力の魔力弾を撃てたのか。それは《増幅》の並行チャージをしてたからである。刀を納刀した時に抜いた魔術銃に魔力を込め、それを《増幅》で何倍にもしていたのだ。そして今そのチャージが完了したため遂に撃ったというわけである。
僕は王までの道が開けた瞬間に銃をホルスターに入れ、刀を抜刀して王に接近する。《増幅》で床を蹴る力を倍にし、一瞬にして、刀の間合いまで詰める。王は急いで生み出していたナイトリーダーを何体も盾にする。
月華天真流 桜華
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月華天真流 桜華
刺突による八連撃技。刺突した場所に桜の華が咲くようだという意味。
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刺突時にさらに魔力を込め、貫通力を上げて一気にナイトリーダーたちを蹴散らす。ナイトリーダーたちに隠れていた王は剣を構えていたが、そんなもの関係ない。『散華』を放ち、剣を吹き飛ばした後に残りのスケルトンも完全に殺す。
「これで終わりですね。」
‘っ!!まだだ!我が負けることなどあり得んのだっ!!’
僕の一言に対して王は必死の形相で距離を取ろうとする。そして、なんと剣を自分の核に突き刺す。
‘ぐぅっ!ア、アァァァァァァ!!!’
すると剣が粒子に変わり、王に溶け込んでいく。王は段々と変化していき、白かった骨は黒く染まり、威圧感が増す。僕はすぐさま《看破》を使用して変化を確認する。
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名前 :ダンクラス・フォン・アルデビス
性別 :男
種族 :ブラックソードスケルトンキング
職業 :指揮者 剣士
Lv : 42
技量ランク : B+
スキル : 骨強化lv.7 剣術lv.8 空間属性魔法lv.6
マスタースキル :指揮官lv.3
ユニークスキル :配下創造 狂化 魔剣化
称号 :スケルトンを統べる者 アルデビス王国国王 魔剣を取り込んだ者
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マスタースキル
指揮官 : 指揮系統の高位スキル。戦略等が上手くなる。
ユニークスキル
狂化 : 身体能力と魔力を大幅に上昇させる。ただし、理性が無くなってしまう。
魔剣化 : 魔剣を取り込んだ者が所有する能力。その身を魔剣と化すことで魔剣の能力を全て引き出すことができる。ただし、一度使えば元には戻れない。
(随分と強くなったな。さしずめ第2ラウンド開始といったところか。)
‘フゥ、チカラガワイテクル。コレナラバキサマモタオスコトガデキヨウ。’
そういうや否や《配下創造》を使用してくる。
(体力は大幅に消費するけど使うしかないか。)
僕はすぐさま決断し、《命令》を使用する。
『《配下創造》を使用するな』
‘ウグッ!リ、リョウカイシタ。’
(はぁ、これで手数で勝負されることは無くなったな。)
僕は少し呼吸を乱しながら、次にどう王を倒すかを考えていた。
(刀主体で攻めるか、銃を使って消耗戦にして、核が見えた瞬間に一撃で殺すかだな。でも、今の銃の威力だと厳しいかな。ならば、やはり刀主体で攻めるとするか。)
僕は攻め方を変えずにいくことにした。決断と同時に王に詰め寄り『散華』を放つ。しかしその刺突は王の手前で見えない壁に衝突し、止まる。
「空間属性魔法か?魔障壁は発動していなかったし。」
‘その通り。これこそがこの世界でも有数の超希少魔法属性の空間である。流石の汝も突破出来ないか。’
僕の独り言に対して、王は反応し興奮したように話しかけてくる。
(厄介だけど、魔力がなくなれば意味はないな。)
僕は『散華』と『桜華』を連続で放ち続ける。しかも《増幅》を一撃ごとに使い、威力を高める。その連撃を王の手前の壁の一点のみに集中させる。
流石の王も魔法にかかりきりのようで動くことができない。暫くしてその均衡が崩れる。王の魔力が枯渇寸前となり、障壁の維持ができなくなり、障壁が消える。そして遂に僕の攻撃が届く。『桜華』による八連撃が王の四肢を穿つ。それにより、王の左手と右足が砕ける。
しかし、王は痛みを感じていないのか、機敏な動きで僕から距離を取る。
‘キサマァァ!!ワレノテアシヲヨクモヤッテクレタナァ!モウユルサヌ。
スキルハツドウ、《キョウカ》、《マケンカ》!!’
王の叫びと同時に王の黒い体に赤い線何本も広がり、脈打ち始める。更に砕いた手足は戻り、剣の形を取る。
変化が終わると、そこには四肢が剣となり、《狂化》の影響で理性を失った、怒れる王がいた。




