第2話 ♥元凶♥ feet.???
- 第2話 ♥元凶♥ feet.??? -
午後8時4分。
いつもあの人がバイト終わってあの店から出てくる時間。
いつも通り、私は彼の少し疲れたような顔を見て、お疲れ様、と心の中で呟き、夜道で事故に合わないか見届けた後、自宅に帰る──はずだった。
────は?
誰、なにあの女。
いや、知らない訳では無い。
あの人のバイト先の先輩で確かあの人の1歳年上、菜花朱音とかいうやつだ。
女が、あの人に一言、何か言い、震えながら頭を下げる。
頭が、ザワザワする。
思考が、1番考えたくないことを考えている。
嘘でしょ、これは、これは多分きっと…………何かの間違い…………
なんて暗示が数秒で打ち砕かれることは本能的に理解していた。
今、目の前で繰り広げられている、予想もしていなかった悪夢の始まりにクラクラする。
あの人が、女に一言、返す。何を言っているか聞き取れないが、次の女の行動で、私の理性は吹っ切れ…………かけ、た。
やだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだ触るな触るな触るな触るな私の、私の、私の霞君に触るな、抱きつくな、離れろ、いやだいやだいやだいやだ、いや、あ、あああああああああああああああああああああああああああああああ『だめ、だめ、今壊れちゃだめ』
スッ……と、理性の声がぐちゃぐちゃになっていた頭の中に響く。
そうだ、今、感情で動いたら、全て上手くいかなくなる。
それこそ、1番最悪の方向に物事が進んでしまう。
これ以上あの二人を見ると壊れそうになるのを理解し、目線を下に向けてうずくまる。
荒くなっていた動悸を抑えようと、息を深く吸って……吐いて……吸って……吐いて……
目を閉じるとフッと、あの悪夢がまぶたに浮かんだので、慌てて目を開け、目先のコンクリートを凝視する。
コンクリートは、みるみるうちにふやけてきて、輪郭が消え、灰色しか識別できなくなっていく……。
汚ったない鉛色。
私の心を移したかのような、無機質で均一な……
だめだ、今、今あの二人を考えるのは……自殺行為でしかない。
今日はもう、家に帰って………………考えよう。
────どうやって、あの女を、計画的に、無駄なく、素早く、『処理』するか…………