翻弄
6.
「『志河くんの友達くん』は名前なんて言うの?」
「あ、俺澄元って言います!昨日はすいませんっした!!!」
後ろに倒れたまま澄元は頭をぺこりと下げた。
「いいよいいよ、澄元くん。あと一つ言うけれど、私ヤンキーじゃないからね?」
そう放って彼女は僕の傍に来た。
「実は志河くんのメルアド教えて欲しいなと思って!」
「あぁ、いいよいいよ。」
メルアドを交換したあと、満足気に教室から出ていく彼女を僕と澄元、だけではなくクラス全体が 見送っていた。
「志河、星河さんと友達らしいぞ。」
「星河さんヤンキーじゃなかったの?」
そんな話がちらほらと聞こえてくる。
「なぁ志河、お前いつから星河さんと友達だったんだ?昨日知らないって言ってたじゃねえか!嘘、嘘だったのか!?俺達もう終わりね・・・。」
「何言ってんだよ。昨日コンビニで偶然会って話しかけられたんだ。家も近いみたいだし。」
「星河さん確かに怖かったけどあんな美人だぜ?そんな人と家が近くってラブロマンスじゃん・・・羨ましい・・・。」
これで皆の星河さんへの誤解が少しでも解ければと願う。
変な噂のせいで友達が出来なかったのは流石に同情せざるを得ない。
そんなことを考えていたらケータイが震えた。
見てみると早速星河さんからメールが来ていた。
『今日、夜ちょっとあえない?行きたい場所があるの!』
僕は高校生だと言うのに部活に入っていないので年中放課後は暇だ。
星河さんのメール内容にはもちろん了承した。
夜だけど女の子と二人で出かける。
流石にジャージだと格好つかないし恥ずかしくもどんな服装で行くかで頭がいっぱいだった。
ーーー
「蒼月どこか行くの?」
「ちょっとそこまで。」
母さんの質問をくぐり抜けて家を出る。
指定では19時に僕のマンションの前。
まだあと10分あるし余裕だ。
服装も気合いを入れすぎずラフすぎずいい感じにキマっている。
何気なくマンションの手すりから下を見ると女の子が立っている。
「嘘だろ・・・俺が遅刻かよ!」
急いで降りると完全ラフ着の星河さんが自転車を止めて待っていた。
「やぁ色男、乗りたまえ!」