その子
3.
「蒼月ー!どこ行くの?」
「コンビニ〜!!」
母さんは声が大きい。
そんな大声出さなくても聞こえてる。
よれたジャージにマフラーを巻いてコンビニに向かう。
「夜はもっと寒いな・・・。」
コンビニは駅前まで行かないと無い。
駅前は賑やかだけれど、この辺りは街灯がポツポツとあるだけで薄暗く何も無い。
あと1ヶ月でクリスマスなせいか、コンビニではクリスマスケーキのチラシが張り巡らされてる。
「ミルクティーは必須だな・・・あとはポテチと・・・っと!」
お菓子コーナーで悩んでると誰かにぶつかられた。
「わっ、すみません!」
声のする方を向くと、女の子が困った顔で立っていた。
サラサラで柔らかそうな栗色の胸元まである髪。
切れ長だけれど大きい目をしている。
美人ってこういうのを言うんだよなぁ・・・。
「いやいや大丈夫です!」
「あれ、君もしかして葉月高校?」
「えっなんで知って・・・。」
「待って、とりあえずレジ行こ!」
レジを終えて店を出て僕はその子と並んで歩いていた。
母さん以外の女の子と話すのなんていつぶりかで緊張して何話せばいいか分からない。
「君、家どっち?」
「あっ僕こっち・・・。」
「なんだ、私もそっちだ。この道長いし歩きながら話そっか。」
「あ、はい・・・。」
オドオドしながら喋って、自分こんなキャラだっけとか一人で悶々としていた。
男は美人を前にすると緊張する、そういう生き物だ。
そう自分に言い聞かせていた。
「君の名前、なんて言うの?教えてよ。」
「志河蒼月だよ。」
同じ高校だって知ってるのに僕の名前は知らないという事実にショックを受けた。
「私は星河、星河依弦。」