独り
タイミングの悪さに定評のある主人公。名前はまだない
『おまえだろうがぁぁぁぁ!!!』
大声で叫んだもののそれが神に届くことはなく、
それどころかすでに異世界に飛ばされたあとのようだ。
何処だここは?そういえば神が城に転移されるって言っていたな。
ローブを着た集団に囲まれて目の前には鎧をまとった騎士のような方々。その奥には豪勢な玉座に座りきらびやかな服装、さらに頭に王冠がのせてある。人目見ただけでかなりの権力者だとわかる。
やってしまった!!こんななかで僕は大声で叫んだのか!?あまりの恥ずかしさに固まっていると目の前の一人の騎士がこちらに歩きだしながら叫んだ。
騎士「貴様!!王の御前で無礼であるぞ!!!」
そう言って僕の顔を思いっきり殴り付けた。
僕の意識は事もなく狩り取られたのだった。
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目が覚めたとき僕は見知らぬ一室でベッドに横たわっていた。
窓の外はもう暗くなってるので夜であることが推測される。だというのにこの部屋は昼間のように明るく部屋の中心に丸い球体が浮かんでいる。これが電球の役割を果たしているのが伺えるがスイッチがあるようには見えない。どうやって浮かんでいるのかもわからない。
『本当に異世界に来ちゃったのかな。まさかいきなり殴られるなんて、夢だったら良いのになぁ。』
しかし殴られた頬の痛みが現実だということを突きつける。
特にやることもないので部屋を明るくしている球体の謎でも調べようとしているとドアを叩くノックの音が聞こえた。
返事をする前にドアは開かれ一人の騎士が入ってきた。
「目を覚ましたか」
『は、、、はぁ』
いきなり入ってきて高圧的な騎士におそるおそる返事をすると騎士は続けて話しだした
「お前のことは二人の勇者から聞いた。どうやらあの二人に襲いかかろうとしたところでこちらの転移に巻き込まれたようだな。さらに神に手をあげ見捨てられるとは、愚かにもほどがある」
『ちょっ、、、ちょっとまってください!あいつらに襲いかかるって、それには訳があって正当防衛ですよ!それに神に手をあげたっていっても原因はあいつら、、』
「だまれ!!!この世界の王に怒号を発した時の悪意はどう説明する!!」
『それにも訳がっ』
「もうよい!貴様の話を信じるものなどこの世界のどこにもおらん!!」
やばい、やばいぞ。説明を聞いておきながらこの人は僕の話を全く聞く気がないようだ。
「まったく。なぜこのような悪人がこの世界に来たのか...まぁかといってもとの世界に戻すこともできんからしばらくしたらこの城を出ていってもらう。最低限のことだけ教えてやるからあとは好きにしろ」
『戻れないんですか!?』
「ふん!貴様なんぞもとの世界に戻すためにどれ程の労力がいるかわかるまい!それに現状ではもとより戻す方法はない。神様も貴様のような悪人を世界から追い出せて喜んでいるところだろう」
どうしてこれほどまでに悲劇が続くのか。もう家族には会えないのか。知り合いもなく、ここが何処かもわからない。呼び出しておいて追い出される。
この世界で僕は生きていかなければいけないのか。
「明日また勇者と貴様の能力を計るためにおれが迎えに来る。それまでおとなしくしておくんだな」
僕の絶望をよそに騎士は冷たい声でそう言い放ちこの部屋から出ていった。